株式会社Classroom Adventure、日本貸金業協会、中央大学文学部心理学専攻有賀敦紀研究室は10月28日、警察官を名乗る詐欺を疑似体験できる無料のブラウザーゲーム「騙される30秒前」を公開した。警察庁の協力のもと制作された本ゲームは、スマートフォンやPCからアクセス可能で、特殊詐欺の約7割を占める「ニセ警察詐欺」の手口を再現し、被害防止の免疫を高めることを目的としている。
警察庁協力のブラウザーゲームで詐欺手口を再現
「騙される30秒前」は、実際の事件で確認された巧妙な手口を、電話着信から金銭の送金に至るまでリアルに体験できる学習型ゲームだ。プレイヤーは高校生、社会人、高齢者という異なる立場の主人公から1人を選択し、着信の3分前からスマートフォンを操作する。体験時間は7分から11分程度で、ブラウザーを介して誰でも無料で利用できる。制作を手がけた株式会社Classroom Adventureは、これまでにも闇バイトへの勧誘過程を追体験する「レイの失踪」などを開発しており、防犯啓発を目的としたゲーム制作のノウハウを蓄積してきた。
「ニセ警察詐欺」が特殊詐欺の被害を押し上げる実態
警察庁の統計によると、2025年におけるニセ警察詐欺の認知件数は1万1014件、被害額は1005億円にのぼる。これは特殊詐欺全体の被害額1423.1億円の約7割を占める規模だ。件あたりの平均被害額は約922.5万円と、他の特殊詐欺と比較して3倍以上の高水準となっている。特筆すべきは被害者の年齢層で、認知件数で最も多いのは30代、次いで20代と、高齢者だけでなく現役世代がターゲットの中心となっている現状が浮き彫りになった。2026年に入ってからも1月から8月の暫定値で6346件、被害額は728.6億円を記録しており、前年を上回るペースで推移している。
ビデオ通話や偽の逮捕状を用いた巧妙な心理戦
ゲーム内では、ニセ警察詐欺の典型的な手口が忠実に再現されている。具体的には、末尾が「0110」の国際電話番号からの着信や、不安を煽る「あなたは逮捕される」という文言、メッセージアプリへの誘導などが盛り込まれた。プレイヤーは、主人公の実名が入った偽の逮捕状や、偽の警察手帳をビデオ通話で見せられるといった圧迫的な状況を体験する。画面構成も一般的なスマートフォンだけでなく、高齢者向けの文字が大きい端末も用意されており、ロック画面の操作や銀行アプリの利用といった一連の動作が、被害者の視点からリアルに追体験できる仕組みだ。
- 末尾が「0110」の国際番号からの着信
- メッセージアプリのID追加とビデオ通話への誘導
- 主人公の実名が記載された偽の逮捕状の提示
- 「誰にも話さないで」という口止めと送金指示
体験後の振り返りと詐欺への免疫形成
ゲームの全行程を終えると、「結末」「振り返り」「実際の被害」「対策」といった項目が表示される。プレイヤーは、自身の操作結果と実際の事件を照らし合わせ、どのタイミングで冷静な判断力を失ったのかを確認できる。警視庁の統計データに基づいた被害の現状を学ぶだけでなく、警察を名乗る不審な電話に対して、どのように対応すべきかのアドバイスも提供される。この仕組みにより、実際に同様の電話を受けた際、ゲームでの体験を思い出し、被害を未然に防ぐための「免疫」を得ることが開発陣の狙いだ。
巧妙化する特殊詐欺への対策が急務となる今後の見通し
ニセ警察詐欺の被害額は、2025年時点で1000億円を超える深刻な水準に達している。SNSやメッセージアプリを悪用し、権威を装って市民の判断力を奪う手法は年々巧妙化しており、警察庁も厳重な警戒を呼びかけている。今回のゲーム公開は、体験型の学習を通じて防犯意識を向上させる試みとして注目される。今後、若年層から高齢層まで幅広い世代が、こうしたデジタルツールを活用した防犯教育に触れる機会が増えることで、被害の拡大に歯止めをかけることができるかが鍵となる。