北朝鮮が相次いで多様なミサイルを発射し、金正恩総書記が核兵器の増産に意欲を示す中、トランプ米大統領が見せる一連の振る舞いに対して東アジアの平和と安全を危ぶむ懸念が広がっている。
3日の極超音速ミサイル発射と高まる北朝鮮の脅威
北朝鮮は今月に入り、活発なミサイル発射を続けている。3日には極超音速の中距離弾道ミサイルを発射し、およそ千キロメートル離れた目標に命中したと主張した。続く12日にも変則軌道を含む複数の弾道ミサイルを飛ばし、14日には日本海で潜水艦から戦略巡航ミサイルを相次ぎ発射している。金正恩総書記は核兵器の増産に強い意欲を示しており、9月の国連総会では外務次官が演説で「核保有国としての地位が覆されることは決してない」と強調した。こうした一連の動きは、国連安全保障理事会決議やこれまでの米朝首脳会談で確認された非核化の合意に反するものである。
トランプ氏の発言と歴代米政権からの重大な転換
本来であれば、こうした核・ミサイル開発はトランプ氏が率先して非難すべき対象である。しかし、同氏は金正恩氏との良好な関係をアピールし、北朝鮮が「57発」あるいは「112発」の核兵器を保有しているかのような発言を繰り返している。核保有の容認とも取れる姿勢は、歴代の米政権が求めてきた「完全な非核化」からの重大な転換にほかならない。このままでは核拡散防止条約(NPT)体制を崩壊させかねない深刻な事態を招く恐れがある。日米首脳会談の直後には政府が完全な非核化への認識を米国と共有したと説明したが、肝心の大統領との間にある隔たりが残る不安は拭えない。
米韓軍事演習の縮小指示とロシアの後ろ盾がもたらす影響
トランプ氏が8月に米韓合同軍事演習の縮小を指示したことも、重大な禍根を残す結果となっている。米朝首脳会談に向けた環境整備の狙いがあるとしても、北朝鮮の脅威が高まる現実を考えれば、むしろ演習を強化すべき局面である。ロシアの後ろ盾を得た北朝鮮は経済状況も上向きつつあるとされ、一段と自信を深めている。米国に対して核保有国の地位だけでなく、休戦中の朝鮮戦争の終戦宣言や経済制裁の解除を要求している可能性が指摘されている。日本にとって危険な短・中距離弾道ミサイルが温存されるような安易な取引は、断じて阻止しなければならない。
朝鮮半島での地雷爆発と日米韓3カ国の結束の重要性
緊迫する朝鮮半島情勢の中、軍事境界線付近にある非武装地帯(DMZ)の韓国側で地雷が爆発し、韓国軍兵士3人が負傷する事故も起きた。韓国軍はこれが北朝鮮軍によって埋設された地雷であるとみなしている。こうした不穏な動きが相次ぐ中、日本、米国、韓国の3カ国による結束を固めることが先決である。功を焦ったトランプ氏が北朝鮮問題で先走りすることのないよう、高市早苗政権は米国への働きかけを最後まで尽くさなければならない。
拉致被害者帰国から24年を迎えた日本と今後の対話の行方
拉致被害者5人が日本に帰国してから15日で丸24年が経過した。日本政府としては北朝鮮との積極的な対話も引き続き探る必要がある。しかし、日本に危険な短・中距離弾道ミサイルが温存されるような妥協や安易な取引が米国主導で進められる懸念は消えない。今後は、日米韓の足並みを揃えつつ、北朝鮮のさらなる挑発行為や不透明な動向に対して厳しい姿勢を維持できるかどうかが、地域の安全保障を左右する最大の焦点となる。