最新の研究により、アフリカのハッザ族とボリビアのチマネ族の腸内細菌叢に約90%の重複があることが判明した。この事実は、人類の移動に伴って特定の腸内細菌が何世代にもわたり受け継がれてきたことを示唆しており、現代人の腸内細菌叢の多様性喪失が健康に与える影響について新たな疑問を投げかけている。
ハッザ族とチマネ族の腸内細菌叢における驚異的な一致
タンザニアの狩猟採集民であるハッザ族と、ボリビアのアマゾンで農耕・狩猟・採集を行うチマネ族は、地理的に約7,000マイル(約11,265キロメートル)離れており、生活様式も大きく異なる。しかし、スタンフォード大学の研究チームが実施した最新のメタゲノム解析により、両集団が保持する腸内細菌種の約90%が共通していることが明らかになった。
スタンフォード大学の微生物学・免疫学教授であり、本研究のシニアオーサーを務めたJustin Sonnenburg氏は、この結果を「本当に驚かされた」と表現している。研究チームは、チマネ族の腸内から約1,400の細菌種を特定し、そのうち1,231種がハッザ族の腸内にも存在することを確認した。この高い重複率は、両集団が環境から偶然同じ細菌を獲得したのではなく、人類の祖先がアフリカから世界各地へ移動する際に、特定の細菌を「古代の旅の道連れ」として受け継いできた可能性を強く示唆している。
この分析において、研究チームは「ディープ・メタゲノミック・シーケンシング」という手法を採用した。これは、サンプル内の微生物が持つDNAの構成要素をすべて読み取ることで、低存在量の種や、通常は捉えにくい種を含む包括的な微生物の国勢調査を行うものである。カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の「チマネ・ヘルス・アンド・ライフ・ヒストリー・プロジェクト」のチームが、チマネ族からボランティアとして採取した糞便サンプルがこの解析に用いられた。
1万7000年前の進化の歴史と人類の移動
研究者らは、細菌の遺伝物質を分析するために複数の相補的な集団遺伝学的手法を用いた。これにより、細菌の株がいつ分離したかを推定したところ、多くの種において、その推定時期がアフリカからアメリカ大陸への主要な先史時代の人類移動のタイムラインと一致することが判明した。細菌の変化率に基づく年代測定技術を用いた結果、平均して約1万7000年前に共通の祖先を共有していたことが示唆され、一部の株はさらに古い時代まで遡る。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のMichael Gurven氏は、「チマネ族とハッザ族がこれほど多くの同じ絶滅危惧種の腸内細菌を共有しているのは、彼らが抗生物質へのアクセスの少ない農村部に住んでいるからというだけではありません。彼らが何百世代にもわたって同じ種を運び続けてきたからなのです」と説明する。この分析は、彼らの祖先、そしておそらくは現代のすべての人類が、遥か昔に同じ細菌を保持していたことを示す強力な証拠であるとしている。
現代人の腸内細菌多様性喪失がもたらす健康リスク
プリンストン大学のAndrew Moeller氏は、この研究の意義について、「どの微生物が人類と共進化してきたのか、そしてどの微生物を失ったことが再獲得すべき有益なものなのかという進化的な疑問については、まだ初期段階です」と述べる。彼はまた、腸内環境が食物や土壌、水を通じて環境中の一般微生物を取り込むプロセスについても触れ、「それらが非常に微小であると認識することは、理解の助けになるかもしれません。原則として、たった一つの細胞があれば新たな個体群を創出できるのです」と説明する。
研究者らは、微生物の長期的な関連性が、近年の微生物叢の多様性喪失が現代人の生物学や健康にどのような影響を与えるかという点において、重要な意味を持つと考えている。しかし、何が失われ、何が保持されているのかを文書化することは、その影響を解明するための最初のステップに過ぎない。