ケニアの裁判所は19日、信者らに死ぬまで断食するよう扇動し、子ども190人と成人1人を殺害した罪などで、カルト教団の指導者ポール・マケンジー被告ら計29人に有罪判決を言い渡した。AFPBB Newsなどが報じた。数百体の遺体が見つかったシャカホラの森をめぐる裁判で、司法は教団の教義と組織的な序列が極端な餓死を引き起こしたと認定した。
ポール・マケンジー被告らに下された有罪判決の全貌
ケニアのモンバサ高裁は19日、キリスト教系カルト教団「グッド・ニュース・インターナショナル・ミニストリーズ」(GNIM)の指導者であるポール・マッケンジー(マケンジー)被告ら29人に対し、殺人罪で有罪判決を下した。AFPBB Newsの報道によると、被告らは子ども190人と成人1人の計191人を殺害した罪に問われていた。クリスチャントゥデイの報道では、当初31人が起訴されたものの、公判中に2人が死亡したため今回の有罪認定は29人となったことが伝えられている。
法廷では、ダイアナ・カベザ・モチャチェ判事が検察側の立証について「子ども190人と成人1人の殺害について、被告29人全員の有罪を立証したと確信できる」と述べた。BBCの英語報道を引用したクリスチャントゥデイの伝えるところによれば、審理は8時間以上に及び、モチャチェ判事は子どもが隔離されて親の目の前で食事を与えられなかった例もあったと指摘している。ロイター通信の報道では、マッケンジー被告は犠牲者に餓死を強制していないとして殺人罪を否認していたが、裁判所はその主張を退けた。
シャカホラの森の集団墓地から見つかった膨大な遺体
教団の拠点は、ケニア東部のリゾート地マリンディから内陸に入ったシャカホラの森に位置していた。CNN.co.jpによると、事件の捜査が始まった2023年4月以降、この森林からはこれまでに429人の遺体が発見されている。事件発覚からの3年間で発掘された遺体の総数は400人を大きく上回り、今回の裁判で扱われた191人以外の死者についても捜査が続けられている。
クリスチャントゥデイの報道によると、犠牲者のうち死因が餓死と確認されたのは72人だった。このほか、窒息や首を手で圧迫されたこと、頭部への外傷による死亡例も記録されている。また、110人の遺体は腐敗が激しく死因を特定できなかったが、裁判所は状況証拠を基にこれらの犠牲者も餓死したと推認できると判断した。子どもの遺体の多くは身元の特定が困難であり、これまでに身元が確認できたのは26人にとどまる。
「イエスに会える」として信者を従わせた体系化された死の序列
検察側の主張によれば、マケンジー被告は森の中に所有する約325ヘクタールの拠点で極端な断食を始め、信者らにその実行を指示した。CNN.co.jpは、断食が子どもたちから始まって連続で行われ、見張り役が信者の行動を管理して脱走を阻止していたと伝えている。教団には、まず子ども、次に10代の若者、女性、最後に男性の順に死ぬべきだとする「体系化された死の序列」が存在していた。
クリスチャントゥデイの報道では、モチャチェ判事が、信者らがマケンジー被告を「イエスの代弁者」と信じていたと指摘している。母親が自分の子どもを餓死させる事態に至った背景には、隔離や支配、家族関係の断絶を通じて教団の教義を受け入れるようになった状況があった。モチャチェ判事は「これこそが極端な教義を受け入れることの恐ろしさだ」と述べ、現代医療や正規の教育を否定する環境下で被害が拡大した実態を明らかにした。

遺族の悲しみと法廷が下した判断への受け止め
事件で娘と孫2人を含む家族8人を失ったフランシス・ワンジェさん(62)は、AFPBB Newsの取材に対し、判決をうれしく思う一方、家族を失った悲しみは今も非常につらく重いと語った。「家族が二度と戻ってこないことは分かっている。それでも、少なくとも一歩前進した」と、ワンジェさんは心境を述べている。
また、疎遠になっているマケンジー被告の息子のダンさん(24)も裁判を傍聴した。ダンさんは判決に安堵しているとし、犠牲者のために正義が実現したと語った。その一方で、マッケンジー氏の弁護人を務めるローレンス・オボニョ氏は、クリスチャントゥデイの報道の中で今回の判決を「不可解だ」とし、控訴する意向を明らかにしている。
今後の量刑宣告に向けられる司法の動向
裁判所が下した歴史的な有罪判断を受け、被告らに対する量刑は11月6日に宣告される予定となっている。CNN.co.jpやクリスチャントゥデイが伝えるように、シャカホラの森からは400人を超える遺体が発見されており、今回の裁判で対象となった191人以外の犠牲者をめぐり、さらなる追起訴の可能性も残されている。ケニア国内に大きな衝撃を与えたカルト教団による惨劇は、司法による最終的な刑の言い渡しという新たな局面を迎えている。
