中止の直接的な原因は、サーキット上空の天候悪化によって医療用ヘリコプターの安全な運航が不可能になったことです。主催者は遅延措置を取り、一時は午後4時30分のスタートを目指しましたが、天候の回復は見込めませんでした。
悪天候と医療ヘリの運航停止が招いた決勝中止
2026年10月23日から25日にかけて開催されたオーストラリア・モーターサイクル・グランプリは、金曜日から悪天候に見舞われていました。日曜日のフィリップアイランド・グランド・プリックス・サーキットは朝から激しい雨と霧、強風が吹き荒れ、視界不良が深刻な問題となりました。Moto3クラスとMoto2クラスのレースも相次いで公式にキャンセルされ、MotoGPクラスのウォームアップ走行も実施見送りとなりました。最終的に午後3時35分、主催者は午後4時30分からのスタート予定を断念し、グランプリレースの全面中止を発表しました。
約30年間にわたりメルボルンから約2時間の場所にある風光明媚で海岸沿いの同サーキットはMotoGPのカレンダーを彩ってきましたが、このような形で幕を閉じることになりました。レースの代わりに、ライダーたちはセーフティカーの先導のもとで最後の周回を行い、メインストレートで停止してサーキットを訪れたファンへ挨拶を行いました。主催者側は、チケット保有者に対して日曜日分は全額返金、複数日用チケットについては部分的な返金手続きをチケットパートナーと進めると表明しています。
ホルヘ・マルティンの負傷とタイトル争いの行方
決勝の中止は、前日の土曜日に起きたアクシデントの当事者にとって大きな救済となりました。アプリリアのホルヘ・マルティンは、スプリントレースでの転倒により前腕を負傷していました。アプリリアの発表によれば、診断結果は橈骨遠位端の非転位骨折であり、骨のズレがないためスペインへ帰国しての手術は回避されました。
土曜日に開催されたスプリントレースでは、ドゥカティ・レノボ・チームのマルク・マルケスが優勝を飾りました。これによりマルケスはランキング首位に返り咲きました。しかしマルティンは土曜日のスプリントで転倒して負傷し、日曜日のレースを欠場せざるを得ませんでした。もし日曜日の決勝が通常通り開催されていれば、マルケスがリードを最大35ポイントまで広げる可能性がありましたが、中止によりその差はわずか10ポイントにとどまりました。マルケスを追う総合順位では、マルティンが10ポイント差の2位、前回のインドネシアGPを制したアプリリアのマルコ・ベッツェッキが首位から50ポイント差の3位につけています。
アプリリアは声明を発表し、負傷したマルティンが現地での治療を受け、翌週のマレーシアGPが開催されるセパンへ向けて出場を目指す見込みであることを明らかにしました。また、昨年優勝したラウル・フェルナンデスは、今回で同サーキットでの開催が最後になることについて「少し泣くだろう」と心境を語っています。
30年の歴史に幕を下ろすフィリップアイランドの今後
1989年に初めてオーストラリア・モーターサイクル・グランプリを開催し、1997年以降は同サーキットを恒久的な拠点としてきたフィリップアイランドですが、今年で契約が満了となりました。プロモーターであるMotoGPスポーツ・エンターテインメントは、F1オーストラリアGPが開催されるメルボルンのアルバート・パークなど大都市圏への移行を模索していました。ビクトリア州政府はフィリップアイランドでの開催継続を強く主張したものの交渉は決裂し、南オーストラリア州が権利を獲得しました。これにより、2027年からはアデレードの市街地サーキットへ舞台が移されることが決定しています。アデレードとの契約は2032年までの6年間となっており、MotoGP初となる都市中心部での開催となります。

メディア報道や放送面では、ネットワーク10が無料地上波でのライブ中継を行い、タラ・ラシュトンが司会を務め、元GPレーサーのダリル・ベッティ、ジャーナリストのサム・チャールウッド、マン島TT勝者のキャメロン・ドナルドが解説を担当しました。また、Kayo Sportsなどのストリーミングプラットフォームでも、MotoGPプレビューショーやパドックショー、クリス・ストーブス、クリス・フェルミューレン、ダミアン・カドリンらによる解説を交えた特別番組が配信されました。
ドゥカティのライダーであるマルク・マルケスは、「フィリップアイランドは並外れたサーキットだ。ここで最後にレースをするのは感情が高ぶるだろう」と述べた。
一方で、地元フィリップアイランドのビジネスオーナーや長年のファンからは、経済的影響や常設サーキットならではの観戦環境を惜しむ声が上がっています。主催者はチケット保有者に対する全額および部分的な返金手続きを進めており、約30年間にわたり島での歴史は雨天中止という形で終わりを迎えました。