欧州で激化するロシアによるハイブリッド攻撃に対し、防衛網の強化と並行して「オフリミット」に関する対話の枠組みを作るべきだと、カーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのガブエフ所長が提言した。2026年10月1日付のフィナンシャル・タイムズが報じている。
激化するハイブリッド攻撃と欧州の防衛戦略
欧州各国は、域内で激化するロシアのハイブリッド活動を抑止するための対応策を模索している。2026年10月1日付のフィナンシャル・タイムズによると、カーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのアレクサンドル・ガブエフ所長は、ロシアの攻撃を全面的に止める手立ては事実上存在しないと指摘した。その上で、欧州に必要なのは攻撃を妨害する防衛手段の構築と、ロシアに対する影響力の行使に向けた冷静な思考、そしてロシアとの間で一定の歯止めを設ける努力だと論じている。この提言は、現在の欧州が直面する安全保障上の課題を浮き彫りにした。.
冷戦期とは異なるエスカレーションの危機
欧州の一部では、ロシアに対して軍事力による直接的な攻撃を提唱する声も上がっている。「ロシア人は力だけで理解する」という論理だが、ガブエフ氏はこれに警鐘を鳴らす。冷戦時代と異なり、現代には通常兵器や核兵器のエスカレーションを管理するための共通言語が存在しない。双方が野放しに攻撃を応酬すれば、偶発的な大規模殺戮を招き、世界情勢が一変するリスクがあるためだ。Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)によると、同氏はこうした状況を「危険な時代」と位置づけ、軍事的な対立がウクライナ戦争をNATOとロシア間の全面戦争に拡大させる危険性を指摘している。

テクノロジーと国内機関の連携強化
欧州が取るべき具体的な防衛策として、ガブエフ氏は軍事投資のあり方の見直しを提言した。欧州諸国は大規模な防衛投資を計画しているが、その資源の一部は警察、防諜機関、対テロ機関の強化や、これら機関間の連携緊密化といった国内ニーズに充てるべきだという。特に、中東やアフリカからの情報によって過激化する若年層がテロや敵対的国家の標的になる懸念がある。同氏は、2001年の「9.11」テロ発生時の対応を教訓に、現代テクノロジー、特にAIを駆使して安全保障体制を再構築する必要性を強調した。
「オフリミット」を巡る対話の可能性
防衛力の強化は攻撃手段の放棄を意味しない。欧州はロシアに対し、敵対行為には代償が伴い、ウクライナへの支援強化につながることを明確に伝える必要がある。ガブエフ氏は、この影響力を行使して、ハイブリッド攻撃の制限に関する議論にロシアを巻き込むべきだと説く。
ガブエフ氏は、ロシアが攻撃を全面的に止めることはないだろうが、双方にとってオフリミットとされるべき標的、例えば純民間空港について、ロシアが協議せざるを得なくなる可能性はあると指摘し、それが大勢の死傷者を出す出来事が起きる可能性を減らしてくれるだろうと述べている。
ロシアの人命軽視や情報機関同士の不信感を考慮すれば、NATOの専門家がこの対話に懐疑的になるのは当然だ。しかし、ガブエフ氏は「失敗するリスクがあっても、強い立場から制限に関する議論にロシアを巻き込む努力はなされるべきだ」と主張している。