ウクライナとロシアは、米国が仲介する和平交渉の再開に向けた意欲を示し、メラニア・トランプ米大統領夫人が率いる人道支援ミッションを支持している。しかし、領土問題や安全保障体制をめぐる根深い対立が依然として残っており、4年半以上にわたる紛争の終結に向けた道のりは依然として険しい。
和平交渉再開に向けた動きと人道支援の合意
ウクライナとロシアの両政府は、米国による仲介を通じた和平交渉の再開に前向きな姿勢を示しており、メラニア・トランプ大統領夫人が率いる人道支援ミッションを支持している。.
しかし、この人道支援の合意がより広範な和平プロセスにつながるかどうかについては不透明だ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は交渉再開に「原則として」合意したことを明らかにしたが、その直後にキーウに対して激しい弾道ミサイルとドローンの攻撃が行われた。これに対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、交渉の裏で武力行使が行われる現状を強く批判している。新たな交渉が実現すれば、2月のジュネーブ会合に続き、トランプ政権が仲介する4回目の対話となる。
「ロシアが交渉に弾道ミサイルで応じる時、殺戮を終わらせるための具体的なステップを踏み出すには、ロシアに対する真の圧力が必要だ」 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領、ウクライナ大統領
領土問題と安全保障の不一致
両国の交渉を阻んでいる最大の要因は、領土の帰属と将来の安全保障に関する根本的な見解の相違である。ロシア側は、憲法でロシア領と定めたドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソンの各地域の完全な解放を不可欠な条件としている。クレムリンは、現在の前線で停戦を行うことは、ウクライナの支配下にある領土を放置することにつながるため、受け入れがたいと判断している。一方、ウクライナ側は、領土を譲歩することは将来的な攻撃に対して脆弱になるだけだと主張し、西側諸国による安全保障の保証を和平の必須条件として掲げている。
一部の提案では、ウクライナの永続的な中立化を憲法で定めることや、NATO拡大の制限、欧州安全保障協力機構(OSCE)による停戦監視などが議論されているが、プーチン大統領はウクライナのNATO加盟を拒絶しており、溝は埋まっていない。ロシアのコマンドは、ウクライナ軍が深刻な危機に瀕していると見ており、戦況が自軍に有利に動く可能性を期待して、冬のキャンペーンに向けた長期戦も辞さない構えを見せている。
米国の外交介入とトランプ大統領の役割
米国の外交努力は、トランプ大統領の対ウクライナ政策の影響を強く受けている。トランプ大統領とゼレンスキー大統領の関係は冷え込んでおり、大統領はゼレンスキー氏を和平の障害であると公言する場面も見られた。ウィトコフ特使は、ロシアで拘束されていた米国人の解放を実現させた際、サンクトペテルブルクでロシア大統領と面会し、同特使がプーチン氏を「人道主義者」と呼んだことは、ウクライナ国内で大きな反発を招いた。一方で、トランプ政権はロシアへの制裁緩和や、ロシアからのディーゼル供給に関する取引など、経済的な pragmatism(実用主義)を優先させる姿勢を示している。

また、トランプ大統領は、ロシアの凍結資産(約3000億ドル)の没収に対して慎重な姿勢を崩していない。ドルが基軸通貨としての地位を失うことを懸念しているためであり、ウィトコフ氏はビジネスマンの立場から「資産凍結の解除と引き換えの交渉」を模索しているとされる。ロシア側も、米国の企業資産の安全と債務支払いを交渉の進展と直接結びつけている。
今後の見通しと残された課題
外交が再開される一方で、欧州諸国やNATOの間では、停戦が単なる「一時停止」に終わるリスクが懸念されている。ポーランドやフィンランドなどは、NATOの抑止戦略の最前線に残る必要があり、ドイツに対しても軍事支出の増大が求められ続けている。ロシア側は、特別軍事作戦のすべての目的が達成されると主張し、包括的な合意に至るまで敵対行為を停止する考えはないことを明確にしている。和平への外交的試みは継続されているものの、現場では依然として長距離攻撃が続いており、平和の実現に向けた具体的なロードマップは描けていない。

アナリストの中には、ロシアが「力による平和」をウクライナに強要しようとしているという見方もあり、紛争の終結が欧州の安全保障秩序の崩壊や、「グレーゾーン」化を招くことへの警戒感も根強い。11月の三者協議に向けて、欧州連合(EU)が方針を調整できなければ、ウクライナ紛争の経済的代償を最も高く支払うのはEUになるとの懸念も示されている。