政府は安全保障3文書の改定に伴い、防衛産業の強化を目指す「防衛産業基盤戦略」を年内に策定する方針を固めた。AIや無人機など軍民両用技術を育成し、新設する法人を通じて有事の生産能力確保と経済活性化の両立を図る。複数の政府関係者が明らかにした。
防衛産業の変革に向けた戦略の策定
政府が年内に策定する「防衛産業基盤戦略」は、防衛力の土台となる産業基盤を抜本的に強化することを目的としている。ロシアによるウクライナ侵略の長期化を背景に、国内での無人機や弾薬の増産体制を維持する「継戦能力」が抑止力として重要視されているためだ。政府関係者によると、戦略ではAIや無人機を多用する新しい戦い方への適応を急ぎ、政府全体で防衛産業の変革に取り組む姿勢を明確にする。収益性の低さから事業撤退が相次ぐ現状を打破し、防衛産業を成長分野へと転換させるのが狙いだ。
軍民両用技術の育成と産業政策の展開
具体的な施策として、防衛省と経済産業省が連携し、軍民両用技術を持つ産業の育成を推進する。想定される分野はAI、航空・宇宙、半導体、バイオ・医療など多岐にわたる。経産省が培ってきた中小企業支援や産業育成のノウハウを、防衛装備品に関わる技術革新に活用する計画だ。防衛分野で磨かれた技術を民生分野へ転用し、経済成長につなげる「防衛と経済の好循環」を目指す。また、政府が継続的に調達を行うことで、技術力のある新興企業の成長を後押しする仕組みも導入する見通しだ。
防衛装備品の輸出支援を担う新法人の設立
政府は防衛産業の基盤強化を専門的に担う法人として、独立行政法人の新設を計画している。この法人は、防衛装備品の輸出支援や新興企業の育成、技術革新の促進を一手に引き受ける。政府は来年の通常国会に設立のための新法を提出し、同年10月の発足を目指す。発足時は約300人体制でスタートし、5年後には約600人規模まで拡充する方針だ。主な業務には、輸出先の開拓、契約手続きの代行、輸出後の整備や訓練の提供が含まれる。
有事に備えた生産体制の構築
新法人は、有事の際に迅速な増産を可能にするための「国有施設民間操業(GOCO)」にも取り組む。これは国が生産施設を保有し、実際の運営を民間に委託する方式だ。平時から民間のノウハウを活用しつつ、緊急時には政府主導で供給量を確保できる体制を整える。国内防衛産業の生産能力を維持・向上させることは、他国に対して侵略を思いとどまらせる抑止力の強化に直結すると政府は判断している。
- 防衛産業基盤戦略の主な柱:軍民両用技術の産業育成、新法人の設立、国有施設民間操業(GOCO)の導入、新興企業の成長支援
今後の法整備と組織発足のスケジュール
政府は今回の戦略策定を通じ、防衛産業を国家安全保障の不可欠な要素として位置づけ直す考えだ。来年の通常国会に向けた新法案の準備と並行し、具体的な予算措置や産業界との連携強化を急ぐ。防衛産業が抱える市場の小ささや収益性の低さという構造的な課題に対し、政府が主導してどのような成長モデルを提示できるかが今後の焦点となる。防衛力の強化と経済活性化を両立させるための具体的な道筋は、年内に策定される戦略の中で詳細が示される見通しだ。