米スペースXが提供する衛星通信サービス「スターリンク」および軍用版「スターシールド」のウクライナにおける利用をめぐり、所有者のイーロン・マスク氏は24日、軍事利用の制限をかけたことをX(旧ツイッター)への投稿で認めた。これまでの主張を転換し、ドローン攻撃への悪用を防ぐための措置だと説明している。
スターリンク制限の理由とウクライナ側の反応
テクノロジー界の富豪であるイーロン・マスク氏は24日のX投稿で、ウクライナ軍が商用サービスのスターリンクを利用規約に違反してドローン攻撃による殺害に使用したと非難した。これまでウクライナによる接続を意図的に制限したことはないと主張してきたが、先週その抜け穴をふさいだとしている。これに対し、ウクライナ大統領顧問のセルヒー・ベスクレストノフ氏はテレグラムで、ウクライナのドローンは時速70~90キロメートルの制限がありロシア領内では機能しないため、物理的に長距離や中距離の攻撃には使用できないと反論し、マスク氏の主張は「非常に奇妙」だと評したと、bbc.comが伝えている。
通信速度の回復とゼレンスキー大統領の発表
通信の制限をめぐっては、ウクライナのイェウヘニー・フマラ国防相が同日、軍のドローンが時速400キロを超える速度で移動しても安定した接続が確立されるようになったと発表した。これまでは時速161キロを超えると接続が切れるとされていた。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領もテレグラムに「速度は必要なレベルに達した」と投稿している。Business Insider Japanの報道によると、ゼレンスキー氏は以前のインタビューで速度低下措置を「重大な過ちだ」と糾弾し、前線での人命損失につながると訴えていたが、再び機能しているとしてアメリカ側への感謝を述べている。
米国の政策転換とロシアのエネルギーインフラ攻撃
衛星通信網をめぐる問題は、ウクライナによるロシアの石油インフラ攻撃に対し、アメリカとウクライナが対立する中で浮上した。Business Insider Japanの報道によると、ドナルド・トランプ米大統領はウクライナによるロシアの石油精製施設への攻撃が世界中の原油価格を押し上げていると主張し、ロシアのエネルギー分野に対する経済制裁を緩和しようと動いていた。マスク氏も10月10日のX投稿で「ゼレンスキーは一線を越えた」と批判しており、ウォール・ストリート・ジャーナル紙はマスク氏自身が通信速度の制限を直接指示したと報じている。一方、トランプ氏は10月19日の記者団への発言で、誰が指示を出したのかは関知していないと述べている。

同盟国による「脱スターリンク」と代替網の構築
今回の事態を受け、米国の同盟国ではスペースXの衛星通信網に対する依存を見直す動きが加速している。Yahoo!ニュース(中央日報日本語版)の報道によると、ウクライナは22日にフィンランドの衛星企業アイサイ、通信装備企業ノキアと独自の衛星通信網開発に向けた協力意向書を締結し、2028年の初衛星打ち上げを目指している。欧州連合(EU)も衛星通信網「アイリス」の構築を計画しているほか、カナダも通信網「ライトスピード」を推進するなど、民間企業1社の決定に軍事作戦が左右されるリスクを避けるための動きが広がっている。また、Forbes JAPANの報道によると、米データ解析企業パランティアの幹部はNATO軍事AIシステム「メイブン」には外部から停止させるキルスイッチがないと説明しつつも、欧州は米国企業への一定の依存を受け入れざるを得ないと警告している。