ロシア空軍が、わずか6機しか保有していないとされるMiG-35戦闘機を防空任務に投入している可能性が浮上した。2026年10月にウクライナなどの一部欧州メディアが報じたもので、長距離攻撃用ドローンや巡航ミサイルの迎撃に活用されているという。本格的な量産に至っていない希少な機体の投入は、ロシアの防空体制にかかる負担の増大を示しているとの見方が出ている。
MiG-35の防空任務投入とロシア軍の現状
MiG-35は、MiG-29を発展させた戦闘機であり、外観もよく似た構造を持つ。北大西洋条約機構はMiG-29にフルクラムというコードネームを付与しており、MiG-35にはフルクラムFという名称を与えている。同機は2018年から少数機の生産が始まったものの、ロシア軍で本格的な配備や運用は進んでおらず、海外市場でも受注を獲得できていない。大規模な量産には至らず、現在も単座型4機、複座型2機の計6機しか存在しないとされている。
航空分野を専門とするオープンソース・インテリジェンスコミュニティーが公開した、コックピット内から撮影されたとみられる画像が今回の報道の根拠とされている。ロシア当局者や製造元の統一航空機製造会社は、2023年からロシアメディアに対し同機の実戦使用を説明してきた。しかし、ドローンなどの迎撃任務に使用されていると具体的に報じられたのは今回が初めてとみられる。ただし、公開された画像だけで実際の迎撃任務やその詳細まで確認できるわけではない。
ウクライナ軍によるロシア領内への長距離攻撃
2025年ごろから、ウクライナ軍はロシア領内への長距離攻撃を重視する姿勢を強めている。ロシア領土の奥深くにある軍事施設、石油精製所、データセンター、飛行場などの戦略目標が攻撃の対象となってきた。攻撃には、長距離を自律飛行できる自爆型ドローンのほか、巡航ミサイル「フラミンゴ」や海軍の対艦ミサイルをベースに開発された「ネプチューン・ロング」などが使用されている。こうしたウクライナ側の攻勢が、ロシア軍の防空体制に大きな負荷を与えている。
ウクライナ海軍によるボリソグレブスク飛行場攻撃
ウクライナ国防省は2026年10月21日、ロシアのヴォロネジ州にあるボリソグレブスク飛行場を攻撃し、Su-34前線爆撃機4機を破壊したとする動画を公開した。dメニューニュースが伝えたところによると、この攻撃は10月15日にウクライナ海軍がネプチューンミサイルを使用して実施したものである。公開された動画には、激しく炎上する基地とみられる施設の様子や、攻撃後の衛星画像が映し出されていた。
ボリソグレブスク飛行場は、ロシア軍がウクライナの前線や都市に対して滑空爆弾による遠距離攻撃を行うための拠点として使用されてきた。ウクライナ海軍の報道官は今回の戦果について、「戦闘機2〜3機分ではあるが、ロシアの防衛産業が少なくとも半年かけて積み上げてきた努力を、正確な一撃で無駄にした」と発表している。ウクライナはネプチューンミサイルの実績をアピールし、エストニアやルーマニアなどの欧州諸国への売り込みも進めている。

イギリス国防省が公開したハンスカヤ飛行場の衛星画像
イギリス国防省は2026年10月16日、ウクライナ軍が無人機で攻撃したロシア南部アディゲ共和国のハンスカヤ飛行場の衛星画像を公開した。carview!の報道によると、ウクライナ軍がロシア軍のSu-35戦闘機とSu-34戦闘爆撃機を各1機、および弾薬庫の破壊に成功したとする分析が明らかにされた。同飛行場への攻撃をめぐっては、ウクライナ保安庁が10月4日、特殊部隊「アルファ」によるドローン攻撃で両機種と弾薬庫を破壊したとすでに発表しており、イギリス側の分析はこれを裏付ける形となった。
イギリス国防省の指摘によれば、Su-34はウクライナに向けて滑空爆弾を投下する任務に使用されているという。さらに、同省は2026年9月29日にロシア極東でTu-95戦略爆撃機が墜落したことにも触れ、ロシアは1週間のうちに航空機を3機喪失したと分析している。ロシア軍は2022年2月の全面侵攻後、累計で100機以上の軍用機を失ったとみられている。
今後の航空戦と防空体制の行方
ロシア空軍が保有する最新鋭の第5世代ステルス戦闘機であるSu-57の配備が進まない中、Su-35は空対空の制空任務や対地攻撃において重要な役割を担い続けている。しかし、相次ぐ飛行場への攻撃や航空機の喪失、さらには数少ないMiG-35の防空任務投入といった事例は、ロシア軍が直面する装備面および防空体制の厳しい現実を浮き彫りにしている。ウクライナ軍による長距離打撃能力の向上と持続的な攻撃が、今後の戦局にどのような影響を与えるのか注目される。