イギリス政府は22日、異常気象や自然災害、サイバー攻撃などの緊急事態に備えるため、国民に3日分の飲料水や缶詰の食料などを備蓄するよう呼びかける「Be Ready」キャンペーンを開始し、アンディ・バーナム首相は不測の事態がますますしょっちゅう起きていると指摘している。.
「Be Ready」キャンペーン開始の背景と政府の狙い
イギリス政府は22日、異常気象や自然災害、サイバー攻撃などの緊急事態に備えるため、国民に3日分の飲料水や缶詰の食料などを備蓄しておくよう呼びかける「Be Ready(準備万端に)」キャンペーンを開始したと、bbc.comが報じた。イギリス国内では暴風雨が相次ぎ、サイバーセキュリティー問題でインターネットの多くのサイトが使用停止になるなどの事態が発生している。アンディ・バーナム首相は、不測の事態がますます頻発しているようだとして、国民に備えを呼びかけた。バーナム首相は23日、パニックになるということではなく、万が一厳しい状況になったとしてもしばらくは乗り切れるように賢く対応しておくことが重要だとBBCラジオに対して語っている。ウェス・ストリーティング国防相は22日、BBC番組「ニューズナイト」で、この勧告は前政権の指針と同様の内容であり、何らかの特定の情報によって発動されたものではないと強調した。全般的な意味での国としてのレジリエンス、つまり回復力の向上が目的だと同相は説明している。政府発表は人為的な気候変動によって発生頻度が高まっている異常気象に焦点を当てていたが、国防相は企業に対してますます高度化するサイバー攻撃の脅威や、敵対的な国家主体またはテロリストによって引き起こされるサプライチェーンの混乱にも言及した。
"It's just sensible to be prepared". Andy Burnham spoke to @MattChorley about why stocking up on essentials is helpful and explains that being prepared can be helpful in case of an emergency. Listen to the full interview on BBC Sounds. pic.twitter.com/JFjxdG2FHq
政府が推奨する3日分の備蓄品チェックリスト
政府が作成したチェックリストでは、1人当たり9リットルの水、つまり3日分に相当する量と、缶詰の肉や野菜、ドライフルーツなどの保存のきく食料を用意することが推奨されている。政府はそのほか、電池式または手回し式のFMラジオを用意しておくことを推奨している。国家的な危機が発生した場合、BBCはニュース放送に加え、健康と安全に関する情報放送を優先する仕組みになっており、深刻な停電が発生した場合にFMラジオは最新情報を受け取る最良の方法になる。政府作成のチェックリストにはさらに、手指消毒剤、ウェットティッシュ、洗面用具、ペット用の餌、赤ちゃん用品、懐中電灯、毛布、デバイス用の充電済みモバイルバッテリー、決済システムがダウンした場合に備えての現金、救急箱、重要な書類のコピーなども挙げられている。ジェイムズ・マリー財務担当政務次官はBBC番組「ブレックファスト」で、危機に備えて備蓄するという政府の指針にはまだ従っていないと認めた。アイルランド、フランス、オランダなどの近隣諸国もかなり前から同様の指示を出しているとしたうえで、自身はまだそのアドバイスをすべて実践しているとは言えないと述べ、家に備蓄しているのはコーヒーくらいだと明かしている。
“Be ready by having some everyday essentials… three litres of water per person per day, tinned goods… to last a few days”Speaking to @vicderbyshire, Defence Secretary Wes Streeting details advice to households to be prepared for a “dangerous and turbulent world”.#Newsnight pic.twitter.com/y1T9Jsijqk
食料サプライチェーンの脆弱性と各政治家の反応
イギリス会計検査院は9月初め、サイバー攻撃の脅威の高まりと気候危機のため、イギリスの食料サプライチェーンは危険にさらされていると警告した。食糧・環境・農村地域省がサプライチェーンの回復力向上のために十分な対策を講じてこなかったと指摘されている。温度管理が必要な食品を輸送する企業を代表するコールドチェーン連盟の最高経営責任者はBBCに対し、イギリスは食品供給システムに高リスクの個所があることを知っており、ロシアのサイバーハッカーの標的になっていると話した。23日にイングランド北西部リヴァプールで開かれた山火事対策サミットで講演したバーナム首相は、政府が適切な準備を怠ったという見方を否定した。気象現象は確実に影響しており、イギリスは今嵐に見舞われておりコーンウォールで停電している方々には心からお見舞い申し上げる、と首相は述べている。労働党の閣僚からは独自の備蓄品に関する発言も飛び出した。9月末の労働党大会では、アンジェラ・レイナー住宅担当相が自分の非常用持ち出し袋にはマスカラ、コンシーラー、ソーヴィニヨン・ブランのワイン1本、そしてベイクドビーンズの缶詰を入れると冗談めかして発言した。バーナム首相は、ちょっとした危機的状況に陥った時にまずワインを飲むのが最善策かどうかは分からないが、基本的なものを優先してベイクドビーンズやスープをお勧めしたいとBBCラジオで語っている。
野党の批判と今後の見通し
同じBBC番組「ブレックファスト」に出演した最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、いつでも1週間分の食料は備蓄していると述べた。党首は、保守党政権も緊急事態への備えについて同様の勧告をしていたと述べた上で、各世帯が備蓄したとしても国防やサイバー攻撃、ハイブリッド戦争はどうなっているのかという懸念を示した。国を守るための資金が出ていないとして、政府が直面しているリスクや大きな問題に対してどのような対策を講じているのか説明していないように見えることが心配だと付け加えている。イギリス政府は今後も「Be Ready」キャンペーンを通じて国民への啓発を続け、気候変動やサイバー攻撃といった複合的な脅威に対抗するための国家的なレジリエンス強化を図る方針である。供給網の脆弱性指摘や野党からの厳しい追及が続く中、各家庭における具体的な備蓄の徹底と、インフラ防衛に向けた政府の総合的な実効策が問われる局面となっている。