福島県いわき市で約40年前に発見された琥珀から、約9000万年前の白亜紀に生息していたアシナガバエ科の新種化石が見つかった。専門家は、後ろ脚の12本のトゲが交尾の際にメスを固定する役割を果たしていたと分析しており、国内最古の新種として日本古生物学会の国際誌に掲載された。
9000万年前の琥珀に閉じ込められた新種のハエ
福島県いわき市で採取された「いわき琥珀」の中から、中生代白亜紀(約9000万年前)のハエの化石が発見された。読売新聞などの報道によると、この化石は体長1.2ミリの成虫で、羽の翅脈(しみゃく)の特徴から、現在は絶滅しているアベナフォラ属に分類される新種であることが判明した。研究チームは産出地にちなみ、このハエを「イワキムカシアシナガバエ」と命名した。この研究成果は今月、日本古生物学会の国際誌のオンライン版で公開されている。
アマチュア研究家による発見と博物館への寄贈
この貴重な化石を見つけたのは、いわき市のアマチュア化石研究家・鈴木千里さん(77)である。鈴木さんは、いわき市から双葉郡にかけて広がる地層「双葉層群」でこの琥珀を採取した。その後、県立博物館に寄贈され、昆虫化石の専門家である教育実践学研究所(東京)の相場博明所長が詳細な研究を行った。双葉層群からはこれまでに新種のゴキブリなど多くの昆虫化石が見つかっており、保存状態の良さが専門家の間でも高く評価されている。
後ろ脚の12本のトゲが示す交尾戦略
教育実践学研究所によると、この新種最大の特徴は、後ろ脚に備わった鋭く長い12本のトゲにある。一般的にアシナガバエの仲間は前脚にトゲを持ち、体を支えたり交尾時の姿勢を維持したりすることが知られている。しかし、イワキムカシアシナガバエは後ろ脚に特化したトゲを持つことから、相場所長は「交尾する際、後ろ脚でメスの体を押さえていたとみられる」と指摘する。これは白亜紀の時点で昆虫の交尾形態がすでに多様化していたことを裏付ける証拠となる。
「まるで生きているよう」な保存状態の良さ
琥珀に閉じ込められた化石は、驚くほど良好な状態で保存されている。相場所長は「まるで生きているように見え、今にも動き出しそうだ」と語っており、当時の生態を解明する上で極めて重要な資料となっている。鈴木さんは「いわきという名前が世界に発信されるのがうれしい」と話しており、地域から見つかった化石が古生物学の発展に寄与したことに喜びを見せている。
- 名称:イワキムカシアシナガバエ
- 時代:中生代白亜紀(約9000万年前)
- 特徴:後ろ脚に12本の鋭いトゲを持ち、交尾時にメスを固定していたと推測される
さらなる発見が期待される「双葉層群」
今回の発見は、日本の古生物学において国内最古の新種化石という記録を刻むこととなった。双葉層群には、今回発見されたイワキムカシアシナガバエ以外にも、まだ多くの化石が眠っている可能性がある。鈴木さんは「もっと色々な化石が眠っている可能性がある」と今後の調査に期待を寄せており、研究者たちによるさらなる解析と、同地層からの新たな発見が待たれている。