国家主席の任期制限撤廃という危険な賭け
中国の1982年憲法は文化文革の反省を踏まえ、国家主席の任期を1期5年、連続2期10年までと規定した。2013年に選出された習主席は本来であれば2023年に退任するはずだったが、18年に制限を撤廃した。田中三郎氏は、2期10年の終わりで後継者を指名し引退後に院政を敷くほうが安全であり、前例を踏襲すれば党内の平穏を保てたはずだと指摘する。しかし習主席は終身独裁の実現を目指し、リスクの高い選択に踏み切った。多くの専門家はロシアのプーチン大統領への強い憧れが背景にあると分析している。
求是誌が公表した内部演説と党内の抵抗勢力
時事通信解説委員の西村哲也氏の解説によると、党理論誌「求是」は10月15日、1月12日の第20期党中央規律検査委第5回総会における習主席の演説内容を公表した。習氏は二心を抱き、表裏のある党員や、思想的自由主義、政治的投機主義、セクト主義、自分本位主義、事なかれ主義などの問題を具体的に挙げ、厳しく批判した。中国共産党が党内に多くの抵抗勢力が存在することを公然と認めるのは異例であり、今年の党中央委員会総会を前に政治的引き締めを強化する狙いがあるとみられている。

軍部や改革派に対する相次ぐ大粛清の背景
こうした党内の不満や抵抗に対し、習政権は大規模な粛清を進めてきた。1月20日には軍人トップだった中央軍事委の張又侠筆頭副主席が党行事を欠席し、24日には重大な規律・法律違反の疑いで取り調べが決まったと発表された。さらに10月には、上海閥出身で経済通の論客として知られた元重慶市長の黄奇帆氏が不正調査の対象となったことが発表された。デイリー新潮の報道では、こうした相次ぐ粛清により、人民解放軍や太子党といったグループが反撃の機会をうかがっているとの見方が伝えられている。
相次ぐ健康不安説とアメリカ訪問時の対応
デイリー新潮が伝えるところによれば、習主席の健康状態を巡る懸念も浮上している。9月12日にインドのニューデリーで開かれた第18回BRICS首脳会議の際、習主席が約30秒間意識を喪失していたとの情報が流れた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は首脳会議の晩餐会を体調不良で欠席したと報じ、9月23日にワシントン郊外のアンドルーズ統合基地に到着した際も、タラップで夫人や手すりにすがる姿が確認された。インディペンデント紙や米メディアは、休憩時間の確保や昼食会の中止など中国側が厳しい要求を出したと伝えている。
今後の政治日程と政権の行方
10月26日から29日まで北京で第20期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が開催される予定となっている。田中氏は、習主席が健康不安を抱える中で開かれるこの会議や来年秋の党大会が、今後の権力闘争の行方を占う最大のポイントになると強調している。党内の引き締めを図る習氏に対し、不満を抱く勢力がどのような動きに出るのか、今後の動向が注目されている。