トランプ米政権は2026年10月20日、ウクライナ侵攻を受けて2022年から実施していたロシア産ディーゼル燃料の禁輸措置を一時的に解除した。11月3日の中間選挙を控え、農業州の支持獲得を狙い、燃料価格の高騰を抑える方針だが、共和・民主両党から強い批判を浴びている。
中間選挙を意識した禁輸解除の背景
米西部サンフランシスコでは、ガソリンスタンドに掲示されたディーゼル燃料価格が注目を集めている。毎日新聞によると、トランプ政権による今回の禁輸解除は、11月3日に投開票を控えた中間選挙を見据えた措置とみられる。共和党は支持基盤である農業州で苦戦を強いられており、トラクターなどの農機具に不可欠な軽油の価格高騰を抑制することで、形勢挽回を図る狙いがある。政権はロシア産資源の輸入国に課す追加関税も見送った。法案署名から1カ月足らずでの方針転換について、政権側は「国益にかなう」と説明するにとどめている。
与野党から噴出する批判の声
この決定に対し、与党・共和党内からも反発の声が上がっている。Wedge(ウェッジ)が報じたところによると、テッド・クルーズ上院議員ら複数の共和党議員が「停止は間違いだ」「無責任極まりない」と公然と批判した。民主党のミークス下院議員も「ウクライナを支持する代わりに、プーチン大統領に取り入り、自己利益のために取引している」と厳しく非難している。党派を超えた批判の背景には、ロシアへの制裁緩和が同国の資金調達を容易にし、結果としてウクライナ侵攻を長期化させるという懸念がある。
ウクライナへの厳しい姿勢と外交の混迷
トランプ大統領の対ロシア融和策は、ウクライナへの強硬な態度と鮮明な対照をなしている。トランプ氏は、ロシア国内の製油施設を攻撃するウクライナに対し、攻撃を控えるよう要求した。さらに、ゼレンスキー大統領に対しては「和平合意をまとめられる新たな指導者に代えた方がよい」と辞任を迫る発言も行っている。また、ウクライナ軍による米企業製衛星通信の利用が制限される事態も発生しており、冬の到来を前に防空能力やエネルギー施設の維持が危ぶまれている。トランプ氏は燃料輸入をめぐるロシアとの合意に際し、「プーチン大統領に感謝したい」と述べるなど、ロシア側を擁護する姿勢を隠していない。
公私混同が疑われる和平交渉の場
米メディアの報道によれば、トランプ氏の娘婿であるクシュナー氏らが先月、プーチン氏と和平交渉を行った際、ロシア企業が保有する国外資産の売買取引についても協議されたとされる。この場には中東の富豪らも関与しており、停戦交渉の場が商談に利用されているとの指摘が出ている。公正な仲介役であるべき立場でのこうした言動は、公私混同との批判を免れない。経済的利益が優先される状況に対し、停戦そのものが本来の目的であるのかという疑念が、米政界や国民の間で広がっている。
米国民の世論と選挙への影響
トランプ政権の政策に対する米国民の視線は厳しい。エコノミストとユーガブが10月14日に行った世論調査では、ロシア産ディーゼル油の輸入問題が浮き彫りになった。調査では米国民の57%がウクライナに同情を示し、ロシアに同情する層はわずか4%にとどまった。ロシアからの石油輸出に対する制裁そのものには57%が賛成している。ロシアからのディーゼル油輸入に限定した質問では、賛成33%に対し反対が40%と上回った。米国民の8割以上がプーチン氏を信頼できないと考える中、中間選挙まで残り2週間を切った現在、今回の融和策が支持率をさらに押し下げる可能性も指摘されている。
今後の焦点は、この禁輸解除が実際に米国内の燃料価格を押し下げる効果を生むか、そして有権者がこの対ロシア政策をどのように評価するかに移る。冬を前にしたエネルギー需要の高まりと選挙戦の終盤戦が重なる中、政権の判断がどのような結末を招くのか、米国内では厳しい視線が注がれている。