2026年4月、レバノン南部の村アル=ティリで取材中のレバノン人ジャーナリスト、アマル・ハリル氏がイスラエル軍の空爆により死亡した。国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチなどは8月、一連の攻撃が意図的な民間人狙撃であり、戦争犯罪に該当すると非難した。
アル=ティリでの相次ぐ空爆とジャーナリストの死
2026年4月22日、レバノンの新聞『アル=アクバル』で長年特派員を務めていた42歳のアマル・ハリル氏と、フリーランスのカメラマンである21歳のゼインバ・ファラジ氏は、イスラエル軍が南部の村から撤退したという報道を確認するため、同国との国境から約8キロ離れたアル=ティリへと車で向かった。
彼女たちは、市町村の公式車両に乗っていた別の2人の男性の後を追うように移動していた。しかし、村に到着した直後の午後2時25分頃、先頭の車がイスラエル軍の最初の空爆を受け、乗っていた男性2人が死亡した。現場上空には、すでにイスラエルの無人偵察機(ドローン)が低空で旋回していたという。
低空旋回するドローンと繰り返された攻撃
最初の空爆後、ハリル氏とファラジ氏は身の安全を確保するため車を離れ、近くの建物や構造物の周辺に身を寄せた。しかし、上空のクアッドコプター(小型ドローン)は容赦なく接近してきた。生存者であるファラジ氏は、調査機関に対して当時の恐怖を生々しく証言している。
ドローンが壊れた屋根から入り込み、極めて近くまで接近してきたとき、1メートルもかからない距離で顔を覆いながら、以前に見たドローンが人を殺害する動画のことを思い出し、自分の目の前で爆発するのではないかと思ったと、フリーランス・カメラマンのゼインバ・ファラジ氏はアムネスティ・インターナショナルおよびABCニュース等の報道で語っている。
約1時間後の午後3時40分頃、二人が駐車していたジャーナリストの車が2度目の空爆を受けた。この爆発で両名とも負傷し、ハリル氏は頭部や鼻から激しく出血した。彼女たちは近くの放棄された食料品店へと這うように逃げ込み、支援を求めたが、民間防衛隊や赤十字の救急車両はイスラエル軍からの許可や検問所での足止めにより、数時間もの間現場に入れなかった。さらに午後4時25分頃には、二人が隠れていた建物自体が3度目の空爆を受け、完全に崩壊した。
国際人権団体による戦争犯罪の指摘とイスラエル軍の主張
イスラエル軍は、ファラジ氏とハリル氏が民間人であることを知っていたか、あるいは知るべき状況にあったにもかかわらず攻撃を仕掛け、その後、救急隊員による数時間にわたる救助活動を妨害したことは明白な証拠に基づいていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチ・レバノン研究員のラムジ・カイス氏は『ガーディアン』およびABCニュース等の報道で指摘している。

アムネスティの中東・北アフリカ担当ディレクターであるヘバ・モライエフ氏も、最初の攻撃で当初の標的が排除され、ドローンが上空を旋回していたにもかかわらず攻撃を続行したことは「国際人道法に対する衝撃的な軽視を示している」と非難した。一方、イスラエル軍は、一連の空爆がヒズボラの戦闘員を狙った作戦の一環であったと主張し、ジャーナリストに危害が加わったことについては遺憾の意を示しつつ、予備調査を法務部門に送付して精査中であると表明している。
医療従事者の遅配と残された検証課題
検視報告書によれば、アマル・ハリル氏は瓦礫の下で重傷を負いながらも数時間にわたって生存しており、最終的な死因は頭部外傷と大量出血による心停止であったという。レバノン赤十字の救急隊員はようやく許可を得てファラジ氏を救出することに成功したものの、ハリル氏の救助に向かった際にはイスラエル軍から発砲を受けるなどして現場への接近を阻まれた。