警視庁は、中国人富裕層に学歴などを偽った書類を作成させて在留資格「高度専門職」を不正に取得させたとして、出入国管理法違反の疑いで会社役員の藍沢鵬程容疑者(39)ら3人を逮捕した。同容疑者は「最短1年で永住権取得可能な日本移住プログラム」をうたい、顧客1人あたり約7千万円の報酬を得ていた可能性があるとみられている。.
「最短1年」をうたう移住プログラムの実態
警視庁国際犯罪対策課は、在留資格「高度専門職」を不正に取得させたとして、東京都港区の会社役員・藍沢鵬程容疑者を再逮捕し、28日に発表した。朝日新聞によると、藍沢容疑者は永住権取得を支援するビジネスを展開しており、顧客とみられる30〜40人がこの資格で入国していたという。同容疑者は「全部否認します」と供述している。
藍沢容疑者が客への説明資料として使用していた資料には、「最短1年で永住権取得可能な日本移住プログラム」と記されていた。費用は60万ドルで、そのうち15万ドルを「給与」として還元する仕組みが記載されていたという。資料には中国のネットスラングで国外移住を意味する「潤」を用い、「潤日(中国から日本へ脱出する)」との言葉も添えられていた。
修士号偽造と架空雇用の手口
今回の逮捕容疑は、2025年12月5日に共謀して虚偽の申請を行った疑い。逮捕されたのは藍沢容疑者のほか、永住を希望した中国籍の女(57)と、東京都江東区豊洲3丁目の医療コンサル会社役員の女(45)の計3人。
朝日新聞の報道によれば、3人は中国籍の女が実際には取得していない修士号の証明書を偽造した。さらに、医療コンサル会社で勤務する予定がないにもかかわらず、雇用契約があるかのように偽装した文書を東京出入国在留管理局に提出したとされる。中国籍の女は「藍沢から合法に永住権が取れると言われ、60万ドルを支払った。申告された大学は卒業しておらず、会社で働くつもりもなかった」と供述している。
性善説に基づいた制度設計の隙
在留資格「高度専門職」は、学術や経営などの分野で優れた能力を持つ外国人を誘致するために導入された。朝日新聞の取材に対し、専門家からは「性善説で設計された制度が悪用された」との指摘が上がっている。入管庁の審査が書類審査を原則としている点が、今回の不正の背景にあるとみられる。
この資格は学歴や職歴、年収などをポイント化して認定される。政府は高度人材を呼び込むため、70点以上なら3年、80点以上なら1年で永住許可の申請が可能となる優遇措置を導入してきた。2012年から2025年までの認定件数は計6万5千件に上り、2025年時点の高度専門職保持者のうち、中国籍の人物が約67.3%を占めている。
「会ったこともない」雇用主の証言
摘発された事件では、共犯者間の接点の希薄さも浮き彫りとなった。医療コンサル会社役員の女は、中国籍の女を自社で雇用したとする書類を作成したものの、「(中国籍の女とは)会ったこともありません」と説明している。同容疑者は、在留資格申請に必要な書類準備や手続きはすべて藍沢容疑者が行ったと供述した。
中国籍の女も、藍沢容疑者とは第三者を通じて紹介されたと話している。警視庁は、藍沢容疑者が中国人富裕層の日本移住需要を巧みに取り込み、大規模に不正を繰り返していた疑いがあるとみて、全容解明を進める方針だ。
広がる制度利用と今後の課題
政府が「世界最速級のグリーンカード」と銘打ち、高度外国人材の獲得を目指すなかで、今回の事件は制度の脆弱性を露呈させる形となった。通常の在留資格では永住許可の申請に原則10年の滞在が必要だが、高度専門職はその期間を大幅に短縮できる。
今後、警視庁は報酬として得た可能性のある約7千万円の金の流れや、他にも同様の手口で不正に在留資格を得た人物がいないか、捜査を継続する見通しだ。優秀な人材の受け入れと、不正な手段による永住権取得の防止をいかに両立させるかが、今後の制度運用における大きな課題となる。