セルビアの元大統領アレクサンダル・ヴチッチ氏が、学生主導の抗議運動による歴史的なスナップ選挙を経て退陣しました。現在、同国は新政権の首相や閣僚の指名に向けた調整を進めており、元中央銀行総裁や著名なバスケットボール選手、医学者らが主要候補として浮上しています。
次期政権の主要候補者たち
学生主導の運動が勝利を収めた2026年10月25日の選挙後、セルビアでは新たな統治体制の構築が急務となっています。学生側のリストに名を連ねる候補者は、経済、医療、スポーツなど多岐にわたる専門分野の背景を持っています。
- デヤン・ショスキッチ氏(59):2010年から2012年まで中央銀行総裁を務めた経済学者。ヴチッチ前政権下での制度的弱さを批判し、公的財政の健全化を通じた賃金と年金の引き上げを掲げています。
- イリヤ・スルダノヴィッチ氏(55):ノヴィサド大学医学部の教授で心臓専門医。学生運動のリード候補として、市民に平等な医療を提供する分散型システムへの改革を公約に掲げています。
- デヤン・ボディロゴ氏(53):元ユーゴスラビア代表バスケットボールチームのキャプテンであり、現在はユーロリーグ会長。今回の選挙を” 国を取り戻すための戦い “と位置づけています。
- ラドミル・サイチッチ氏(64):セルビア科学芸術アカデミー(SANU)の有機化学教授。学生運動の勝利を” 市民の勝利 “と称え、抗議の象徴的な顔となっています。
新政権が直面する政策課題と優先順位
スルダノヴィッチ氏は、ヴチッチ前政権の政策をすべて否定するわけではないという立場をとっています。同氏が率いるリストは、2008年に独立を宣言したコソボについて、依然としてセルビアの不可分な一部であるという姿勢を維持しています。また、現時点での優先事項として欧州連合(EU)への統合ではなく、国内の反汚職改革と国家の” 生存 “を強調しています。
一方、ショスキッチ氏は経済政策において、輸出競争力を高めるためにディナールの為替レートを調整(減価)する案や、賃金抑制によるコスト削減という選択肢を提示しています。これに対し、前政権を支持するメディアからは、かつての総裁時代のディナール下落を巡る批判も噴出しています。
国際社会と国内の反応
サイチッチ氏はコソボを一時的に占領されている領土と呼称し、ロシアとのエネルギー関係の維持を支持する姿勢を示しています。今後、ヴチッチ氏の辞任に伴い実施される大統領選挙において、同氏が有力候補となる可能性も現地メディアやアナリストによって指摘されています。
今後の見通しと未解決の課題
新政権の具体的な閣僚人事や、前政権が抱えていた汚職疑惑への法的対応など、多くの点が依然として不透明です。学生主導の運動がどのように既存の政治構造と折り合いをつけ、実務的な統治へと移行できるかが、今後数週間の焦点となります。
「より良いセルビアを築くこと、それ以外は重要ではない。」
イリヤ・スルダノヴィッチ、心臓専門医・政治家
ボディロゴ氏については、その圧倒的な知名度から我々には神がいる、その名はボディロゴだ
という1990年代からの応援スローガンが選挙期間中も学生集会で繰り返されるなど、運動の求心力として機能しています。新政権の枠組みがいつ確定するかについては、現時点で公式な発表はなされていません。