消費者庁は「お茶」に含まれるネオニコチノイド系農薬の残留基準値について、イミダクロプリドの基準を30ppmへ引き上げる改正案を公示しました。.
ネオニコチノイド基準値の引き上げ検討
消費者庁は今年8月、『食品、添加物等の規格基準の一部を改正する告示(案)』を公示しました。この案では、ネオニコチノイド系農薬の一種である「イミダクロプリド」について、お茶の残留基準値を30ppmに設定することが盛り込まれています。これは従来の基準値と比較して3倍の緩和にあたります。東京女子医科大学附属足立医療センターの平久美子医師は、この動きについて「健康被害との因果関係が分からないのをいいことに、緩和を進めているように思える」と指摘しています。
群馬県で確認された健康被害の報告
ネオニコチノイドによる健康被害については、過去の事例が報告されています。2003年、群馬県の開業医から松林への大量散布に伴う中毒患者の発生が報告されました。平久美子医師によれば、06年に散布は中止されたものの、その後も患者は増加し、09年には全国から延べ3000人以上が診療所を訪れる事態となりました。患者には頭痛、全身の倦怠感、腹痛、胸痛、記憶障害、手の震えといった症状が見られ、日常的にペットボトルの茶飲料や国産果物を摂取していた共通点があったといいます。
残留農薬と健康被害の因果関係
平氏が患者の摂取していた茶飲料を分析したところ、ネオニコチノイドが検出されました。検出値自体は当時の残留農薬基準値を下回るものでしたが、摂取を続けた患者には健康被害が発生していました。2012年にアメリカの研究者と共同で尿検査を行ったところ、症状のある人の尿からのみ同成分が検出されたと平氏は報告しています。また、環境脳神経科学情報センターの木村-黒田純子氏は、2018年に北海道大学などの研究チームが行った調査で、日本のお茶39検体のすべてからネオニコチノイドが検出されたという結果を挙げています。
国際的な規制動向との乖離
諸外国ではネオニコチノイドに対する規制が強化される傾向にあります。木村氏によると、EUでは登録されていた5成分のうち3成分が屋外使用禁止となり、1成分は生殖毒性を理由に登録が抹消され、残る1成分も規制が強化されました。対照的に日本では、危険性が証明されない限り規制が進まない傾向があると木村氏は指摘します。平氏は、日本の食料供給の多くを輸入に頼る中で、農家の使用実態に合わせた緩い基準が設定されている現状を説明しています。
今後の人体への影響は不明
イミダクロプリドは急性中毒の報告数が多い農薬として知られており、慢性摂取が男性の脂肪肝の原因となりうる可能性も動物実験や米国の疫学研究で指摘されています。平氏は「ネオニコチノイドにはたんぱく質と結合して体内に保持される性質があるが、保持期間の検証は十分ではない」と懸念を示しています。国が人体への影響を「不確実」としたまま緩和を進める中で、消費者が日常的にさらされているリスクの全貌は、依然として解明されないままです。今後、基準値の引き上げによって、より高濃度の成分が含まれる製品が市場に流通する可能性も否定できません。