今年夏、欧州を襲った猛烈な熱波により計5万人以上が死亡したと推計されることが、医学誌「ネイチャー・ヘルス」に掲載された新たな分析で明らかになった。CNNによると、これは欧州の記録上最悪の猛暑被害であり、死者の約3分の2にあたる3万2600人以上について、化石燃料汚染に起因する気候変動が直接の要因であると指摘されている。
欧州で過去26年間に例のない死者数
研究チームは、欧州30カ国854都市の今夏の気温と、気候変動の影響がなかった場合に想定される気温を比較するモデルを用いて死者数を算出した。その結果、今年6月初めから8月末までの熱波による死者数は計5万391人に達した。これは過去26年間で最も多い数字であり、大規模な熱波が発生した2022年や2003年の数値を大幅に上回る。この手法で算出された死者数は、各国の保健当局がまとめた推計値とおおむね一致することが確認されている。
気候変動がもたらした直接的な影響
論文著者の1人である英インペリアル・カレッジ・ロンドンのクレア・バーンズ氏は、「欧州の大半の地域で今年夏、暑さによる死者数が記録上最悪になった可能性が高い」と述べ、この事態を「かなりの確信を持って言える」と語った。研究結果は、死亡した3万2600人以上の死因について、化石燃料汚染が引き起こした気候変動に直接帰結できると結論づけている。欧州は世界で最も速く温暖化が進んでいる大陸であり、酷暑がすでに耐え難い状況にあることを裏付ける結果となった。
年齢層を問わず拡大する健康被害
今回の猛暑は、特定の層のみならず広範な年齢層に被害を及ぼした。報告書によると、死亡率が最も高かったのは85歳以上の高齢者層である。しかし、暑さの影響は若年層にも及んでおり、20歳から44歳の間でも800人以上が暑さに関連して死亡した。被害は南欧や西欧で特に深刻だったが、例年は比較的涼しい英国を含む北欧地域でも数千人の死者が確認されており、欧州全域がこれまでに経験した中で最も危険な夏だった可能性が高いと分析されている。
平年を12度上回る記録的な高温
今年5月下旬から8月末にかけて、欧州は前例のない高温に見舞われた。特に西欧では記録に残る中で最も暑い夏となり、平均気温は1991年から2020年の平均を約2.9度上回る水準となった。一部の国では、平年との差が12度を超える日も記録されている。この過酷な状況について、バーンズ氏は次のように警告する。
気候変動による最悪の影響を抑えるという目標から、私たちは大きく外れてしまっている。対策を加速させて協調していかなければ、状況は悪化する一方だと各国政府が認識する必要がある。
今後の国際的な気候変動対策への影響
この深刻な分析結果は、国連気候変動枠組み条約締約国会議に向けた各国の協議を控えたタイミングで発表された。国連の報告書では、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える可能性はすでに失われたと警告されている。気候変動による死者数の増大は、各国政府に対する気候対策の加速と国際的な協調を強く求める材料となっており、今後開催される首脳会議での議論の行方が注目される。