台風25号による記録的な大雨で千葉県印旛沼の堤防が決壊してから1か月が経過しました。浸水した農地では、特定外来生物「ナガエツルノゲイトウ」が繁殖し、農家が深刻な被害を受けています。県は復旧に向けた有識者会議を設置し、支援策を講じています。
印旛沼周辺の農地で広がる「最悪」の外来種
台風25号による記録的な大雨で印旛沼の堤防が決壊してから1か月が経ち、千葉県成田市のコメ農家、山崎康孝さんは自身の田んぼに外来種「ナガエツルノゲイトウ」が流れ着き、大繁殖している現状を明かしています。この植物は南米原産で、生態系に悪影響を及ぼすとして環境省から「特定外来生物」に指定されています。浸水した倉庫ではフォークリフトなどの機械が泥にまみれ、山崎さんは被害総額が約3000万円に上る見込みだと語りました。「まさかこんなことになるとは思わなかった」と、今年8月に完成したばかりの倉庫も被害を受けた無念さを口にしています。.
地球上で最も駆除が難しいと言われる繁殖力
なぜこの植物が農家を悩ませているのでしょうか。東洋大学生命科学部の廣津直樹教授は、ナガエツルノゲイトウを「地球最強最悪な侵略的植物」と評します。実験映像では、種がなくても茎の節から次々と根や茎を伸ばし、わずか2週間で8センチも成長する様子が確認されました。印旛沼土地改良区の小倉経之さんは、表面が茶色く枯れて見えても植物自体は生きており、駆除が極めて困難であると指摘します。山崎さんも「来年、再来年も田んぼの中に生き残っている」と危機感を抱いており、水害後の農業経営にとって大きな足かせとなっています。
千葉県が設置した二つの有識者会議と復旧計画
台風25号から1か月を迎えた21日、千葉県は8月豪雨と今回の台風被害を一体的に検証するため、二つの有識者会議を設置しました。一つは「都市型水害に強く強靱(きょうじん)な県づくり検討会議」、もう一つは「印旛沼堤防調査委員会」です。熊谷俊人知事は定例会見で、被害の検証を深め、実現可能な対策から具体化していく方針を示しています。また、国や県の支援制度の対象外となる半壊世帯に対しては、県独自の特別支援金として20万円を支給する考えも明らかにしました。この支援金は、12月の補正予算案に盛り込まれる予定です。.

総額108億円規模の補正予算と今後の対応
被災地の復旧に向けた動きは加速しています。千葉県はインフラの復旧や応急仮設住宅の借り上げ費用など、総額108億6200万円の補正予算を専決処分しました。今回想定される半壊世帯は約4190棟に上ります。県は「被災地の生活・なりわいの再建」を緊急対応の柱に据え、房総半島の交通ネットワークの強靱化や、印旛沼流域における抜本的な治水対策など10項目を重点方針として掲げています。
今後の焦点は、決壊した堤防の抜本的な復旧工法と、農地を覆い尽くす特定外来生物への具体的な駆除対策です。印旛沼堤防調査委員会には国土交通省や水資源機構もオブザーバーとして参加しており、決壊メカニズムの解明が急がれています。しかし、一度定着した外来種の根絶は容易ではなく、農家が再び安心してコメ作りを再開できる環境をいつ取り戻せるのか、その見通しは依然として不透明なままです。