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京都大学と広島大学の研究チームが量子もつれのW状態を効率的に判定する手法を開発

量子もつれは、電子や光子などの基本粒子が量子的な同一性を共有し、個別の実体として記述できなくなる現象であり、マクロな世界とは大きく異なる量子領域の特性の一つです。量子情報技術の発展には、より多くの粒子をもつれさせると同時に、生成されたもつれ状態がどのタイプであるかを効率的に判定する能力が不可欠となります。…

京都大学と広島大学の研究チームが量子もつれのW状態を効率的に判定する手法を開発

量子もつれは、電子や光子などの基本粒子が量子的な同一性を共有し、個別の実体として記述できなくなる現象であり、マクロな世界とは大きく異なる量子領域の特性の一つです。量子情報技術の発展には、より多くの粒子をもつれさせると同時に、生成されたもつれ状態がどのタイプであるかを効率的に判定する能力が不可欠となります。

W状態が持つ「堅牢性」とGHZ状態との違い

これまで、多粒子もつれシステムの測定において、物理学界はGreenberger-Horne-Zeilinger(GHZ)状態という、いわば「バニラアイスクリーム」のような基本的で標準的な状態に注視してきました。しかし、もう一つの重要なもつれ状態である「W状態」は、GHZ状態とは異なる興味深い特性を持っています。

W状態の最大の特徴は、もつれ状態にある粒子のうち一つを失ったとしても、残りの粒子が有用なもつれ状態を維持できるという堅牢性にあります。この特性は、現実世界の混沌とした環境下で動作する耐故障性量子ネットワークの基盤となる可能性を秘めています。

量子トモグラフィーのボトルネックを解消する「ワンショット測定」

従来、量子状態の特定には「量子トモグラフィー」という手法が用いられてきた。これは、多数の同一システムを測定し、その断片的なデータを組み合わせて状態を再構成する手法だが、粒子数が増えるにつれて必要な測定回数が指数関数的に増加するという深刻な効率性の問題があった。

京都大学と広島大学の研究チームは、この欠落していた測定能力を解決するため、新たな手法を開発しました。チームは、力押しで問題を解決するのではなく、カスタム設計の離散フーリエ変換光回路を構築し、効率的な「ワンショット」測定を実現しました。この回路には、アクティブな制御を必要とせず長期間動作可能な高安定性の光量子回路が採用されています。

この手法により、研究者はW状態の「サイクリックシフト対称性(cyclic shift symmetry)」を探索することが可能になりました。これは、個々の光子が循環的にシフトしても、もつれシステムの構造的な記述が変化しないという量子特性に基づいた、いわばシステムの「指紋」のようなものです。

測定精度87%を達成した実験結果

「GHZ状態のもつれ測定に関する最初の提案から25年以上を経て、ついにW状態についても、3光子W状態の真正な実験実証を伴うもつれ測定を得ることができました」

Shigeki Takeuchi, 量子情報研究者(責任著者)

量子テレポーテーションとオンチップ化への展望

2025年9月にScience Advances誌で発表されたこの成果は、量子情報をある場所から別の場所へ転送する量子テレポーテーションや、新しい量子通信プロトコルの開発に寄与すると期待されています。量子テレポーテーションは物質を物理的に輸送するのではなく、もつれを利用して情報を含む量子状態を転送するプロセスです。

今後の展開として、研究チームは以下のステップを計画しています。

  • 3光子以上の、より大規模で汎用的な多光子もつれ状態への手法の拡張
  • デバイスの小型化と統合を可能にする、オンチップ光量子回路の開発

「量子技術の研究開発を加速させるためには、基本概念への理解を深め、革新的なアイデアを生み出すことが不可欠です」

Shigeki Takeuchi, 量子情報研究者

研究チームは、これらの結果が光量子計算、量子通信、およびセンシングにおける多量子ビットもつれ測定の幅広い応用に向けた重要な節目になるとの見解を示しています。

執筆者について: nipponese

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