テスラおよびスペースXの最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏が台湾積体電路製造(TSMC)との協議を認めたことを受け、半導体業界や自動車市場に大きな波紋が広がっています。テラファブ計画を巡る動向や、競合企業および市場への影響について詳報します。
イーロン・マスク氏がTSMCとのテラファブ協議を認めた発言と市場の反応
独立系メディアのCulpium Researchを主宰するテックジャーナリストのティム・カルパン氏が、TSMCがイーロン・マスク氏の進める半導体製造プロジェクト「テラファブ(Terafab)」との協力や新工場の運営に関与する可能性を報じたことを受け、週末の土曜日にマスク氏は自身が運営するX(旧Twitter)上で言及しました。マスク氏は「ただの議論だが、何か結果につながるかもしれない」と投稿し、TSMCとの間で協議が行われていることを認めました。
この発表を受けて市場は即座に反応を示し、月曜日の取引でTSMCの株価は約1%上昇しました。また、テスラ(TSLA)の株価は前週末の金曜日に約5%上昇して370.59ドルで取引を終え、1ヶ月間で最も好調な一日を記録したものの、週間では0.4%の下落となりました。ウォール街のアナリストの間では、ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージングパートナーであるジーン・マンステル氏が、テスラの第3四半期における486,532台(内訳としてモデル3およびモデルYが478,237台、その他のモデルが8,295台)の納車実績や、フルセルフドライビング(FSD)の優位性を高く評価しています。マンステル氏は「伝統的自動車メーカーにとって過酷な状況になるだろう」と述べ、「テスラの納車実績が好調を維持する一方で、競合のフォードやGMの電気自動車(EV)販売はより深刻な落ち込みを見せている」と指摘しています。さらに、モーニングスターはテスラに対して450ドルの公正価値評価を維持し、現在の水準から約21%の上値余地があるとして「わずかに割安」と判断しています。
「ただの議論だが、何か結果につながるかもしれない」
イーロン・マスク氏、X(旧Twitter)にて(Yahoo Finance経由)
Culpium Researchのティム・カルパン氏は、最もあり得るシナリオとして「TSMCが新しい工場を所有し運営しようと試みる形」を挙げており、スペースXやテラファブ側が出資を行ったり、一定量のチップ購入を保証したりする形が想定されています。
インテル株の下落とファウンドリ戦略への打撃
一方、TSMCとテラファブの提携観測が浮上したことで、インテル(INTC)にとっては大きな逆風となっています。月曜日の市場でインテル株は約2%(または3%)下落し、一時は115.31ドルの安値を記録しました。インテルは今年4月にテラファブ計画への参画を発表し、同社の次世代1.4nm級「14A」プロセス技術をテラファブに供給する予定となっていました。
市場関係者やアナリストの間では、今回の協議はインテルのファウンドリ事業再生にとって見過ごせない試練になるとの見方が強まっています。インテルの第2四半期における外部顧客からのファウンドリ売上高は2億9300万ドルにとどまっており、テラファブのような大型案件の獲得は同社の外部展開の試金石と位置づけられていたため、世界最大の委託半導体メーカーであるTSMCが参入するとなれば、インテルの存在意義が揺らぐことになります。D.A.ダヴィッドソンのギル・ルリア氏は「インテルが株価で評価されているファウンドリのストーリーにとって大きな打撃である」と指摘しています。
テラファブの規模と将来のAIコンピューティング計画
テラファブは、テスラとスペースXが共同で進める大規模な半導体製造プロジェクトであり、テキサス州グライムス郡(オースティン周辺を含む)に建設が予定されています。8月6日に公式に確認された第1期投資額は16.8億ドル(約530億台湾ドル)に上り、少なくとも3,000人の従業員を雇用する計画です。また、スペースXが5月に提出したS-1書類によると、すべての建設フェーズを合わせた総投資額は最大1190億ドル(約3.8兆台湾ドル)に達する可能性があります。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 主なパートナー | テスラ、スペースX、xAI(インテルは4月参画) |
| 建設地 | テキサス州グライムス郡(AustinにR&D施設) |
| 第1期投資額 | 16.8億ドル |
| 総計画投資額 | 最大1190億ドル |
| 生産目標 | 年間1テラワットのAIコンピューティング能力 |
| 目標プロセスノード | 2nm |
| 稼働目標 | 2027年末までに限定的運用を開始予定 |
この巨大な製造イニシアチブは、AI、自動車、宇宙船向けのカスタムシリコンを途切れることなく安定して供給することを目的としており、年間1テラワットのコンピューティング能力の達成を目指しています。テスラの第3四半期における車両生産台数は46万4,391台、エネルギー貯蔵の展開量は13.7ギガW時を記録しており、こうした旺盛な需要を背景に、マスク氏は地政学的なリスクや台湾からのサプライチェーン依存を回避するため、自社による国内製造拠点の構築を急ピッチで進めています。

今後の提携行方と見通し
現時点では、イーロン・マスク氏とTSMCの間で行われているのは「協議」段階にとどまっており、正式な合意や契約は結ばれていません。しかし、TSMCが日本(JASM)やドイツ(ESMC)で展開している合弁事業と同様に、現地のパートナーが資金や需要を提供し、TSMCがプロセス技術の提供と工場の運営を担う形式が選択肢として浮上しています。インテルの14Aプロセスとの兼ね合いや、TSMC独自のノード採用の可能性など、計画の最終的な枠組みについては依然として不確定要素が多く残されています。アナリストや投資家は、TSMCによる正式な契約締結の有無や、今後の進展に引き続き注目しています。