3月3日の早朝(米国東部標準時)、地球の影が月を完全に覆う皆既月食が発生し、月が赤銅色に染まる「ブラッドムーン」が世界各地で観測されました。この天文現象は、アメリカ、アジア、オセアニアの33億人以上の人々が目撃できる規模となりました。
「ブラッドムーン」のメカニズムと視認状況
皆既月食では、太陽、地球、月が一直線に並び、月が地球の暗い本影の中に入り込みます。このとき、月が赤く見えるのは「レイリー散乱」と呼ばれる現象によるものです。地球の大気によって波長の短い青い光は吸収・分散されますが、波長の長い赤い光は通過して月の表面に届くため、月が赤みを帯びて見えると解説されています。
今回の現象は全体で約5時間39分にわたって続き、月が地球の本影の中心を通過する「皆既」の状態は約1時間持続しました。地域別の観測状況は以下の通りです。
- 北米: CST(中部標準時)およびPST(太平洋標準時)の地域では早朝に赤い月を観測できる好条件となりました。一方、東海岸の観測者は、月が地平線に沈む直前の午前6時から7時(EST)にかけて、わずかな時間だけ皆既状態を目撃することができました。
- アジア・オセアニア: フィリピンのマニラや中国の海南省三亜などで観測されました。中国では、このイベントが旧正月の締めくくりとなる元宵節(Lantern Festival)と重なりました。また、インドのゴラガートなどでも撮影されました。
- その他の地域: オーストラリアやニュージーランドでも良好な視界が得られました。
オンライン配信による世界的な共有
天候や地理的条件で直接観測できなかった人々のため、複数の団体がYouTubeなどで無料のライブストリームを提供しました。

- Virtual Telescope Project: 創設者のジャンルカ・マシ氏による解説とともに、米国、カナダ、オーストラリアの天体写真家チームによる映像を配信しました。
- グリフィス天文台: ロサンゼルスから、半影段階から皆既、そして影が月を離れるまでをカバーする配信を行いました。
- オークランド天文学会: ニュージーランド北部から、日没後の北東の地平線に昇る月の様子を配信しました。
- Time and Date: ジャーナリストのアン・バックル氏と天体物理学者のグラハム・ジョーンズ氏による専門的な解説付きで、ロサンゼルスや西オーストラリア州からの映像を届けました。
今後の天文イベントと北米での次回予定
北米において、今回のような皆既月食を観測できる次回は2029年6月26日となる見通しです。

また、月食は常に日食とペアで発生する傾向があり、今回の月食の約2週間前である2月17日には、南極上空で「リング・オブ・ファイア(金環日食)」が観測されていました。日食の観測には専用の眼鏡やピンホール投影機が必要ですが、月食は肉眼で安全に観測できる現象であるとされています。