フランス全土で17日に発生したデモの暴動化を受け、マクロン大統領は18日に国民向けテレビ演説を行い、平穏と秩序の回復を訴えた。政府は破壊行為を「極左集団と犯罪者の仕業」と強く非難したが、半年後に大統領選を控える中、治安維持の失敗と政権の指導力低下が浮き彫りとなっている。
マクロン大統領、暴動は「極左集団の暴力」と断定
フランスのマクロン大統領は18日のテレビ演説で、各地で発生した放火や略奪について、強い言葉で批判を展開した。産経新聞および共同通信などの報道によると、同氏は「極左集団に多数の犯罪者が加わり、歯止めのない暴力をふるった」と指摘した。また、「フランス人が、どうしてフランスに対してこんなことができるのか」と憤りをあらわにし、犯行に関与した者は法の下で裁きを受けさせ、損害を賠償させると明言した。政府としては、暴徒と化した一部集団と、教育現場の改善を求めた高校生らのデモを明確に切り分ける姿勢を示している。
全国で1500店舗が被害、警察は2400人を拘束
17日のデモは、高校生や労働組合など約55万人が参加する規模に拡大したが、一部が暴動へと発展した。パリ中心部では商店の破壊や商品を持ち去る略奪が相次ぎ、中部リモージュでは19世紀に建設された市役所が放火により焼失する事態となった。業界団体の集計では、略奪被害を受けた商店は全国で約1500カ所に達する。警察当局は18日までに約2400人の身柄を拘束しており、パリ市内では依然として緊張状態が続いている。仏メディアの報道によれば、暴動自体はおおむね鎮静化に向かっているものの、散発的な小競り合いが続いている状況だ。
政権与党と野党から噴出する批判
大規模な都市暴力を防げなかったマクロン政権に対し、政治的な批判が集中している。支持率で首位に立つ極右「国民連合」のルペン前党首は18日、ビデオ演説で「マクロン政権は息も絶え絶えだ。疲れ切って混乱している」と突き放した。また、極左「不屈のフランス」のメランション元下院議員は、今回の暴動は政府の悪政が招いた結果だと主張した。さらに、マクロン氏の与党を率いるフィリップ元首相ですら、SNSを通じて「秩序回復に向けた具体的な策が示されるのを望んでいた」と述べ、演説内容に対する失望感を隠さなかった。
財政危機に直面する政府の限界
マクロン氏は演説の中で、ガソリン価格の高騰に対する庶民の不安に寄り添う姿勢を示した。しかし、具体的な支援策についての言及はなかった。政府は現在、財政危機に直面しており、2027年に向けた緊縮型の予算案を国会に提出したばかりである。新たな予算を投じる余地がほとんどないという経済的な制約が、政権の対応をより困難にしている。一方で、高校生らのデモについては理解を示し、対話の機会を設ける意向を表明したが、分断された社会をどのように統合していくのか、その道筋は見えていない。
大統領選を控えた政権の先行き
約半年後に大統領選を控える中、今回の暴動はマクロン政権にとって大きな打撃となった。治安回復の遅れと、国民の不満を解消する具体策の欠如は、今後の政権運営に重くのしかかる。フランス政府は、今回の事件を「犯罪」として厳罰に処すことで秩序を立て直そうとしているが、政治的な求心力を維持できるかは不透明だ。政権与党内からも不満が漏れる現状において、マクロン大統領がどのように国民の信頼を回復し、次期大統領選に向けた足場を固めるのか、その対応が強く問われている。
