フランス全土で生活費高騰や教育環境の改善を求める抗議デモが激化し、一部が暴徒化して市庁舎の放火や商店の略奪が発生している。政府は治安維持のため24日に警察官7万人を動員する厳戒態勢を敷く方針を固めた。
デモ隊と暴徒の衝突が全国へ拡大
10月17日、フランス各地で物価高や教育現場の改善を訴える大規模なデモが発生し、約55万人が参加したと毎日新聞が報じた。当初は公立高校の生徒による教員増員や校舎改修の要求が発端だったが、生活費対策を求める市民が加わり規模が拡大した。しかし、デモに便乗した一部の勢力が商店への放火や略奪を繰り返し、中部リモージュでは19世紀に建てられた市庁舎が炎上する事態となった。騒乱の中で負傷者も続出しており、政府は一部都市で夜間外出禁止令を発令するなど混乱の収拾を急いでいる。
24日の抗議活動に警察官7万人を動員
ロイター通信によると、ニュネス内相は23日、24日に予定される全国的な抗議活動に備えて7万人の警察官を動員すると発表した。これは前週末から1万人増員された規模となる。政府は精鋭治安部隊や重武装の機動隊を配備し、暴力行為や略奪を断固として容認しない姿勢を示している。ニュネス氏は「極左」団体がインターネットを通じて公共施設を標的にするよう扇動していると指摘し、平穏なデモとは一線を画す厳格な対応を行うと強調した。また、パリでは労働組合による1件のデモのみを許可し、学生団体などの申請は却下された。
文化施設やスポーツイベントにも影響
暴動再発への警戒感から、パリの社会活動は広範囲で制限されている。ロイター通信によれば、ルーブル美術館やオルセー美術館、オペラ座などの主要文化施設は24日の終日休館を決定した。スポーツイベントへの影響も避けられず、サッカーのパリ・サンジェルマン対オリンピック・リヨン戦は開催日が26日に延期された。一方で、米国ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の試合は予定通り開催される見通しとなっている。経済団体は小売店に対し、自衛目的の過激な行動を控えるよう呼びかけているが、略奪被害はすでに約3000店舗に及ぶ。

政治的基盤の揺らぎと今後の展望
マクロン仏大統領は、正当な市民の要求と暴力行為を切り離して考えるべきだと主張しているが、その求心力は低下している。来春の大統領選を控え、左右の急進勢力が勢いを増す中、政府の改革路線は国民の反発により停滞を余儀なくされている。市場ではフランスの財政赤字に対する懸念も強まっており、格付け会社による国債格付け引き下げの観測も浮上している。極右勢力が今回のデモを移民政策と結びつける動きもあり、社会の分断は深まる一方だ。欧州各国にも波及する生活苦への怒りを前に、政府は党利党略を超えた長期的な対策を打ち出せるのか、政治の責任が厳しく問われている。