モンゴル東部で今月上旬に発生した大規模な草原火災により、約53万ヘクタールが焼失した。火元はKDDIの子会社「モビコム」の車両とみられ、中国側へも延焼の危機が迫った。KDDIは23日、謝罪文を公表し、現地での通信試験中に車両下部から発煙した事実を認めた。
モビコム車両から出火し53万ヘクタールが焼失
モンゴル東部ドルノド県で10月8日に発生した草原火災は、ヌムルグ自然保護区の約79.8%にあたる52万8765ヘクタール余りを焼き尽くした。産経新聞の報道によると、この面積は保護区の大部分を占め、生物多様性の保全にとって重要な景観が失われた。KDDIが23日に発表したリリースでは、子会社である現地通信大手モビコムの社員が乗車していた車両から発煙し、周囲の草に燃え移った経緯が記されている。火災は8日間にわたり延焼し、16日朝にようやく鎮火した。NEWSポストセブンは、焼失面積が東京都の2.4倍に相当すると伝えている。
KDDIとモビコムが説明する訪問の経緯
KDDIは今回の保護区への立ち入りについて、国境港湾局の要請に基づいた業務目的だったと説明している。2018年以降、モビコムは国境地帯の通信インフラ整備を進めており、今回は4G通信ネットワークの開通式典や通信品質の確認が目的だった。同行した日本人幹部は、モビコムの越智康博CEOのみであったという。KDDIは、モビコムの社員らが国境警備隊の入域許可を得ており、当局の車両3台による先導を受けるなど、管理下での行動だったと主張している。また、法令違反行為は一切行われていないと強調した。
中国側が防火コスト負担を訴え謝罪を要求
火災現場が中国内モンゴル自治区と隣接していたことから、中国側でも大きな対応が取られた。環球時報は、中国側が3400人を動員して延焼を食い止めたと報じている。同紙は、モンゴル側と同様に多額の防火コストを負担したとして、日本側に対する正式なコメントと謝罪を求めた。新華社通信は、モビコムの幹部らが保護区内で釣りや猟を計画していたとする現地メディアの報道を引用しており、火災の目的をめぐって情報が錯綜している。これに対しKDDIは、あくまで通信設備の試験が目的だったという立場を崩していない。
自然保護区での行動と安全管理の不備
ヌムルグ自然保護区は立ち入りが厳しく制限された区域であり、今回の事態を受けて安全管理体制への疑問も浮上している。KDDI側の説明によれば、車両下部に付着した枯草が発火原因となるのを防ぐため、20分から30分おきに停車して枯草を除去する手順をとっていた。しかし、8日の移動中に停車した際、車両下部から発煙を確認し、当局の指示で消火を試みたものの延焼を止められなかった。NEWSポストセブンに対しKDDIは、フィールド試験の実施手順や安全管理体制を抜本的に見直す方針を示している。

法的措置と今後の賠償責任の行方
モンゴル当局は現在も火災原因の調査を継続しており、法的措置の検討を進めている。産経新聞によると、当局は責任があると判断した関係者に対し、賠償や原状回復費用の負担を求める方針だ。KDDIは親会社として、今後の当局による調査に全面的に協力する姿勢を見せている。しかし、具体的な賠償の方針については現時点で明言を避けており、被害を受けた自然環境の早期回復に向けた取り組みを行うと述べるにとどまった。現場の状況や発煙の具体的な原因など、解明されていない事実は依然として多い。
本火災に関しては、多くの皆さまが疑問や懸念を抱かれ、さまざまな憶測も含む事実と異なる発信がなされるなか、モビコムにおいて現時点で確認している事実関係を整理し、公表できる状況となったことから、2026年10月23日に同社が公表しました。(KDDIのニュースリリースより)
今後の対応については、モンゴル当局による調査結果を待つ必要がある。地域住民やモンゴル国民への影響が甚大であるなか、日本企業としての責任をどのように果たすのか、その姿勢が問われている。