アメリカのピート・ヘグセス国防長官は10月20日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と南部オヴダ空軍基地で非公式に会談した。この電撃的な訪問は、10月27日に迫ったイスラエルの総選挙や、イランに対する軍事作戦の再開をめぐる米イスラエル間の協議が水面下で進むなかで行われた。
オヴダ空軍基地での極秘会談と米軍将兵の視察
この異例の訪問について、ペンタゴン(米国防総省)およびイスラエル駐米大使館はいずれもコメントを拒否した。しかし、イスラエルのチャンネル13が報じた関係者の情報によると、今回の極秘協議ではイラン情勢を含む複数の課題について意見が交わされたとされる。
米国防総省の報道官はアルジャジーラに対し、この報道について「コメントを控える」と述べた。また、ヘグセス長官は自身のソーシャルメディアへの投稿で、中東、北アフリカ、アジアの一部を管轄するアメリカ中央軍の責任地域において米軍将兵を訪問したと明らかにしている。報道によれば、オヴダ空軍基地にはアメリカの空中給油機や戦闘機が配備されており、ネタニヤフ首相は私用機で同基地へ移動するためベン・グリオン空港から出発し、予定していたエルサレムのテディ・スタジアムでのサッカーの試合への訪問をキャンセルした。

報道では、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相やシュムエル・エズラ国家安全保障顧問も同席したと伝えられている一方、アラブ首長国連邦(UAE)の代表者が参加したかについては情報が分かれており、一部の報道ではUAE関係者の参加が伝えられたものの、別の情報源は会合への同国関係者の出席を否定している。
ピート・ヘグセス米国防長官はXへの投稿で、「わが国の最高の姿が、歴史的な任務に挑んでいる」と述べた。
トランプ大統領によるネタニヤフ支持と対イラン軍事作戦の行方
この電撃的な会談は、ドナルド・トランプ米大統領が自身のソーシャルメディアプラットフォーム「Truth Social」に長文の投稿を行い、翌週に迫ったイスラエルの選挙におけるネタニヤフ首相への「完全かつ全面的な支持」を表明した翌日に行われた。トランプ大統領は投稿の中で、ネタニヤフ首相が国内外からの激しい反対に直面しながらも「強く、勇敢で、素晴らしい」対応を見せたと絶賛し、「ネタニヤフは決してあなたを失望させない!」と強調した。

さらにトランプ大統領は、イランの動向について強い警告を発した。米イスラエル両軍は今年2月下旬にイランに対する大規模な共同攻撃を実施しており、6月にも核関連施設への打撃を与えている。トランプ大統領は、イラン側が態度を改めない限り「仕事を早急に終わらせる」と述べ、11月の米中間選挙後における軍事作戦再開の可能性を示唆している。
10月27日の総選挙を控えたイスラエル国内の政治的動向
ヘグセス長官とネタニヤフ首相の会談は、イスラエル国内の政局が緊迫する中で開催された。10月27日に予定されている総選挙は、2023年10月7日のハマスによる攻撃以降で初めて実施される議会選挙となる。世論調査によると、ネタニヤフ首相が率いる右派の宗教・国家主義連合は過半数割れの苦しい戦いを強いられており、元イスラエル軍参謀総長のガディ・アイゼンコト氏らが率いる野党勢力との間で激しい選挙戦が展開されている。
ネタニヤフ首相自身は先週の地元メディアのインタビューで、選挙前の対イラン再攻撃については「自分たちにとって都合がよくない」として計画していない旨を語っていた。しかし、米国の高官が選挙の直前に極秘裏に現地入りしたことで、安全保障政策や対イラン戦略が選挙戦の最大の争点として浮き彫りになっている。
共和党首脳陣の異なるスタンスと地域的波紋
一方で、トランプ大統領による鮮明な支持表明とは対照的に、J・D・ヴァンス米副大統領はハンガリーのメディア「2WAY」のインタビューに対し、自身の立場は米国の中間選挙に集中しているとして、今回のイスラエル総選挙への不介入を表明した。ヴァンス副大統領は「彼を支持しないわけではないが、支持するわけでもない。イスラエルの選挙には関与しない」と述べており、ハンガリーの選挙でオルバーン・ヴィクトル首相を積極的に支持した姿勢とは一線を画している。
また、こうしたアメリカ側の動きに対しては国内の政治家からも厳しい批判の声が上がっており、バーニー・サンダース上院議員はXへの投稿で、トランプ大統領による支持表明を「権威主義者が別の権威主義者の権力維持を助けている」と非難し、軍事支援の停止を訴えるなど、米国内でも論争を呼んでいる。