ロックスターのニール・ヤングは2026年10月26日、ドナルド・トランプ米大統領の政治資金管理団体「トランプ47委員会」を相手取り、集会での楽曲無断使用をめぐり1,000万ドルの損害賠償と使用差止めを求める著作権侵害訴訟をバージニア州連邦地裁に提起した。
伝説的なカナダ出身のロッカーであるニール・ヤングが再び法廷闘争に踏み切った。今回はトランプ大統領の主要な政治資金管理団体であるトランプ47委員会を標的にしている。
1,000万ドルの損害賠償請求と過去の和解違反
ヤング側の法務チームを務めるロバート・ベッサーとスコット・シモンズの両弁護士は、5ページの訴状において、この楽曲が政治的レトリックの空虚さと貧困や見捨てられた人々が直面する過酷な現実との対比を描いたものであると強調している。訴えではトランプ氏側が過去の合意に違反したことが強く非難されている。
2020年の前回訴訟において、当時の選挙運動組織は迅速に和解に応じた経緯がある。

ニール・ヤングの弁護団は訴訟文書の中で、「ドナルド・J・トランプ・フォー・プレジデント・インクは何の防御も主張せず、訴状送達の直後に速やかに和解に応じ、ヤングからのライセンスと許可なしに『ロックン・ロール・アイランド』を二度と使用しないことを約束した」と述べている。
しかし、今回の被告であるトランプ47委員会は別組織であるため、前回の和解規約の対象外となっていたと報じられている。新たな訴訟では、1,000万ドルの損害賠償金に加え、政治目的での今後の公開演奏に対する差止め命令を求めている。
楽曲の世界観と政治的立場をめぐる対立
訴状では、1989年に発表されたこの楽曲が持つ社会批判的なメッセージ性についても詳しく言及されている。オハイオ州ヤングスタウンで10月12日に開催された集会において、トランプ氏が登壇する直前に同曲が無断で流されたことが今回の直接的な発端となった。

ニール・ヤングの弁護団は訴訟文書の中で、「その歌詞は、母親が赤ちゃんを捨て、薬物依存症者が絶望のどん底に沈み、繁栄の陰にゴミが積み重なるという、現実のストリートの姿をありありと描き出している。一方、繰り返されるコーラスは痛烈な皮肉を放ち、すべての人が共有しているわけではない自由を声高に称賛している。要するに、この楽曲はドナルド・J・トランプの掲げるすべての信条の対極にあるものなのだ」と述べている。
アーティスト本人はこれまでもトランプ政権に対して公然と批判を繰り返しており、自身のウェブサイト上で強い反発の姿勢を示し続けてきた。今回の訴訟においても、無断使用によって支持者であるかのような誤認が生じ、自身のブランドや評判が損なわれたと主張している。
法的な手続きは、両当事者の拠点であるバージニア州の連邦地方裁判所で進行している。
相次ぐミュージシャンとホワイトハウスの衝突
今回の法的な動きは、音楽アーティストとトランプ政権側との間で繰り返されてきた緊張関係の最新の事例に過ぎない。近年では数々の著名ミュージシャンが自分たちの楽曲の無断使用や、政権によるプロパガンダ映像への流用に抗議の声を上げている。

- アイザック・ヘイズの遺産管理団体が2024年に「Hold On, I’m Coming」の無断使用をめぐって提訴し、のちに和解に至った。
- ホワイトストライプスが2024年に「Seven Nation Army」の選挙広告使用をめぐり連邦訴訟を提起した。
さらに、アバやアリアナ・グランデなどの国内外の著名アーティストも、陣営による楽曲の無断使用に対して相次いで異議を唱える事態となっている。
ホワイトハウスは今回の訴訟に対するコメント要請には応じていない。2026年の米国中間選挙の投票日は11月3日に迫っており、選挙戦終盤の動きが注目されている。