アメリカのドナルド・トランプ大統領は2026年10月22日、米スペースXが運営する衛星通信サービス「スターリンク」について、所有者のイーロン・マスク氏がウクライナのアクセスを復旧させたと述べた。ロイターやウォール・ストリート・ジャーナルなどが報じたもので、戦場の通信手段を巡る制限と解除の経緯に注目が集まっている。
トランプ氏がマスク氏に電話で制限解除を要求したとの報道
ウォール・ストリート・ジャーナルは複数の匿名当局者の話として、トランプ氏がマスク氏に対し電話でウクライナ向けのスターリンクの利用制限を解除するよう求めたと報じた。トランプ氏はマスク氏に対し、通信速度が制限された状態が続いていることに不満を示したとされる。これについてトランプ氏は記者団から問われ、言及を避けた一方で「要するに、彼が元に戻した」と述べたとロイターが伝えている。トランプ政権はこれまで、ウクライナのアクセスを制限するようスペースXに指示した事実はないとしていた。
スターリンクと軍用版スターシールドの現状とウクライナの懸念
ウクライナは戦場での通信確保やロシアのミサイル攻撃に対する早期警戒システムの運用でスターリンクに深く依存している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は22日の記者会見で、軍が利用するスターリンクやその軍用版である「スターシールド」の速度が完全には回復していないと訴えた。無人機などの通信可能な移動速度について「まだ時速400キロまで回復していない」と説明し、マルコ・ルビオ米国務長官からの連絡を待っていると述べていた。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、実際の移動速度制限は時速約160キロに設定されていたという。
制限を巡るホワイトハウスとマスク氏の説明の食い違い
スターリンクやスターシールドの利用制限を誰が決めたのかを巡っては、政府とマスク氏の間で主張が分かれている。マスク氏は10月14日、スターシールドは米政府が所有・管理しており、移動速度や利用の制限は米軍が決め、最終的には大統領が判断すると主張した。これに対し米政府高官はロイターに対し、大統領が制限を要請したことは一切ないと否定していた。10月19日にはトランプ氏自身も、サービス制限について誰が決めたのか知らないと述べていた。
共和党議員による調査要求とJ・D・バンス副大統領の見解
米国内ではこの通信制限問題を巡り、議会からも動きが出ている。ペンシルベニア州選出のブライアン・フィッツパトリック下院議員やオハイオ州選出のマイク・ターナー下院議員ら共和党議員は、ウクライナにとって生死に関わる問題だとして議会調査を要求した。一方、J・D・バンス米副大統領は10月22日、マスク氏が民間企業を経営している点を指摘し、政府から指示されない限り紛争に関わりたくないと考えるのは理解できるとマスク氏に理解を示した。

BBCや各メディアによる独自確認と今後の状況
BBCはウォール・ストリート・ジャーナルの報道内容が事実であるかを独自に確認できておらず、ホワイトハウスとスペースXに説明を求めている。ウクライナは10月14日にアメリカからの情報共有が中断されたと初めて報告しており、今回の通信制限と回復のプロセスが今後の戦況にどのような影響を与えるかは依然として不透明なままである。ゼレンスキー大統領が期待するルビオ国務長官からの情報共有を含め、米ウクライナ間の協議や通信システムの稼働状況を引き続き注視する必要がある。