2025年5月に調印された英領チャゴス諸島の主権をモーリシャスへ移譲する合意が、米国のドナルド・トランプ大統領による反対や英国の議会手続きの遅れにより、2026年10月現在も発効の見通しが立っていません。当初の期待とは裏腹に合意は停滞しており、かつて島を追われたチャゴス人住民の帰還実現が危ぶまれています。
トランプ大統領の反対と外交的対立
モーリシャスのダナンジャイ・ラムフル外相が国連総会で「交渉の余地がない」と主権を主張する一方、米国のドナルド・トランプ大統領は合意を「偉大なる愚行」
と批判し、ディエゴガルシア島の軍事基盤の保護に疑問を呈しています。
チャゴス人住民の帰還と文化継承の危機
英国は1960年代後半から1970年代初頭にかけ、ディエゴガルシア島の米軍基地設置のため約1,400人から1,700人のチャゴス人を強制的に退去させました。チャゴス難民グループのオリヴィエ・バンコウルト氏は、帰還を待つ住民の高齢化に危機感を募らせています。
私たちは高齢化しており、今年だけでも数人のチャゴス人の長老を亡くしました。戦争には反対ですが、私たちにはもう時間が残されていません。
オリヴィエ・バンコウルト、チャゴス難民グループ
諸島で生まれた住民は現在58歳から100歳に達しています。エディンバラ大学のクリシル・ウォン=ハン=スン氏は、長年の離散により、チャゴス・クレオール語や伝統的なレシピといった文化の継承が困難になっていると指摘しました。
外交交渉の継続と今後の課題
9月26日、モーリシャスのナヴィン・ラングーラム首相は訪英し、ジョナサン・パウエル国家安全保障顧問らと協議を行いました。これに先立ち、9月21日には英国のアンディ・バーナム首相が、ディエゴガルシア島の運用継続と国家安全保障を担保しつつ、モーリシャスおよび米国と協力していく意向を表明しています。
元国連職員のブルーノ・ドナ氏は、モーリシャス政府に対し、米国議会やアフリカ連合といったパートナーとの持続的な関与を深めるよう促しています。1960年代後半の強制退去以来、チャゴス諸島は半世紀以上にわたり主権をめぐる国際的な紛争の焦点となっています。