テネシー州ナッシュヴィルのリヴァーベンド最高警備刑務所で先月30日に執行された死刑が失敗し、意識不明となっていたクリスタ・パイク死刑囚が6日に意識を取り戻した。米国で致死量の薬物投与を生き延びた死刑囚は、パイク死刑囚だけとみられている。
クリスタ・パイク死刑囚が意識回復
先月30日午後8時ごろ、ナッシュヴィルのリヴァーベンド最高警備刑務所でクリスタ・パイク死刑囚の死刑執行が始まった。しかし、2度の薬物注射でも死に至らず、病院に搬送された。医療スタッフによる薬物の体内排出処置の間、死刑囚は数日間にわたり意識不明の状態が続いていた。ランディ・スパイヴィー弁護士によると、パイク死刑囚が意識を取り戻して最初に発した言葉は「ここはどこ?」、「あなたは誰?」だったという。専門家と弁護団は回復傾向について前例がない事態としており、米国で執行担当者に致死量の薬物を注射されて生き延びた死刑囚はパイク死刑囚だけとみられる。

1996年の殺人事件と裁判の経緯
パイク死刑囚は1996年、コリーン・スレマーさんを殺害した罪で死刑判決を受けた。裁判では、当時恋人だったタダリル・シップ受刑者と共に、素行に問題のある10代向けの職業訓練キャンプで知り合ったスレマーさんを殴打、拷問、殺害したと認定された。事件当時、スレマーさんは19歳、パイク死刑囚は18歳だった。一連の事件から長年の歳月を経て、今回の異例の死刑執行失敗に至っている。
弁護団による証拠保全の申し立てと法廷審理
裁判所は7日、テネシー州当局に対し、失敗に終わった死刑執行に関連するすべての証拠を保全するよう命じた。弁護団は、パイク死刑囚が病院のベッドに手足を拘束されたまま集中治療を受けていると説明した。スパイヴィー弁護士によると、弁護団はこの数日間、脳死状態にあっていつ生命維持装置が外されてもおかしくないとみていたが、6日に話ができるようになり関係者は衝撃を受けたという。弁護団は7日の緊急審理に出席し、将来的な州への提訴の基礎資料とするため、執行に関連する証拠の保全を求めた。ルーク・イーネン弁護士はマイルズ判事に対し、昨日までは意思疎通ができず現在は限定的に話せる状況であると訴えた。
病院での拘束状態と弁護団の要求
イーネン弁護士は、パイク死刑囚が弁護士に連絡できるよう電話の使用を認め、継続的かつ自由に面会できることを求めている。弁護団が病院での面会を試みた際に2時間以上待たされたほか、医療スタッフが手錠を外すよう求めているにもかかわらず、テネシー州の刑務所当局が病院のベッドに拘束し続けていると指摘した。さらに、現在の病院から州立病院などの政府施設へ移送する場合、48時間前までに弁護団へ通知することを求めている。パイク死刑囚の健康状態について、スパイヴィー弁護士は、両腕がひどく腫れ上がり血栓ができているほか、肺炎を患い物をのみ込めない状態であると説明した。
州当局の対応と今後の見通し
テネシー州のウィル・エアーズ司法次官補は、本件における異例の手続き上の状況を指摘し、州にはすでに証拠保全の義務があるため緊急の申し立ては不要だと主張した。これに対しマイルズ判事は、点滴用の管や注射器、包装材、添付文書、ラベルなどの廃棄物を含め、執行室にあったものはすべて保全・維持されなければならないと命令した。テネシー州のビル・リー知事は、年内に予定されていた同州でのすべての死刑執行を停止するよう命じ、今回の執行で何が問題だったのか説明を求めている。同州の刑務所当局の責任者は辞任する意向を表明しており、州当局が死刑執行を改めて設定する意向があるのかどうかは、現時点ではわからないとされている。