NASAの火星探査車キュリオシティが2023年8月20日(火星日sol 3924)に撮影した画像に、遠くの岩山の上に位置する「クラゲ」のような奇妙な物体が写っていたことが、SNS上で話題となっています。この画像は、Kari Sivertzen氏が2026年8月12日にX(旧Twitter)に投稿したことで注目を集めました。
正体不明の「クラゲ状」物体とは
問題の画像は、キュリオシティの右ナビゲーションカメラによって撮影されたグレースケールの生データであり、解像度は高くありません。そこに写っているのは、岩山の頂上に触れているかのように見える「触手」を持つ小さな黒い形状で、その大きさは約15ピクセルに過ぎません。この物体は、幅約96マイル(約154キロメートル)の古代の隕石衝突クレーターであるゲール・クレーターの斜面で確認されました。
この物体の正体について、火星研究者のJean Ward氏は「潜在的なUFO(未確認飛行物体)」である可能性を挙げ、地上に降り立って近くで確認するまでは推測するしかないと述べています。また、SNS上では「火星のクラゲUFOの最初の画像だ」といった反応も見られました。一方で、Sivertzen氏は、この物体が小型ヘリコプターのインジェニュイティではないと主張しています。インジェニュイティはパーサヴィアランスと共にジェゼロ・クレーターで活動しており、キュリオシティが探索するゲール・クレーターからは約2,300マイル(約3,700キロメートル)離れているためです。
専門家が指摘する「撮影上の不具合」の可能性
一方で、この物体が実在するものではなく、画像処理上の不具合(アーティファクト)である可能性が高いとの見方があります。その根拠として、以下の点が挙げられています。
- 時間的な不在: キュリオシティが同じ方向を向いて撮影した、2分前の画像にはこの形状は写っていませんでした。また、約78分後に同じカメラで撮影した画像からも、この形状は消えていました。
- 一過性の現象: 後続の画像に写っていないことから、地形のような恒久的な特徴ではないことが分かっています。
考えられる理論としては、カメラセンサーから地球に届くまでの過程でピクセル値が変化した電子的なグリッチや、送信時の不具合が挙げられます。また、2022年のsol 3613に撮影されたナビゲーションカメラの画像でも同様の形状が確認されており、一過性の相互作用によるアーティファクトである可能性が示唆されています。
物理的な要因と検証の限界
物理的な実体があるとする説では、塵の粒子や「ダストデビル(塵旋風)」である可能性が考えられます。しかし、これを裏付けるための風センサーのデータや、左ナビゲーションカメラによる裏付けデータが存在しないため、確認には至っていません。

このように、低解像度の画像1枚しかなく、補完的なデータが不足している状況では、火星上の「アノマリー(異常)」の正体を特定することは極めて困難であると指摘されています。確定的な結論を出すには、完全なエンジニアリングログなどの詳細なデータが必要となります。
キュリオシティによる火星探索の背景
2012年からゲール・クレーターを探索しているキュリオシティは、数十億年前の岩石から生命の痕跡を探しています。これまで、微生物の生存を支える水や化学物質、栄養素が古代の火星に存在していたことを裏付ける発見を重ねてきました。
また、最近の活動では、バッレ・グランデと呼ばれる谷で、1.5〜3インチの大きさのハニカム構造のような「多角形断層(polygonal fractures)」を発見しています。NASAのプロジェクトサイエンティストであるAshwin Vasavada氏は、これらの形状や化学組成を慎重に測定し、形成過程の解明に期待を寄せていると述べています。