ウクライナ軍は10月19日、大型ドローンを使用して前線から負傷兵を救出したと発表した。現場には地雷があり、ロシア軍のドローンも飛んでいた。陸路での搬送が困難な状況下での新たな試みとして注目されている。.
東部前線で実施された無人機による初の空中救出作戦
ウクライナ陸軍は10月19日、ロシア軍との戦闘が続く前線地帯から、負傷した兵士1人無人機でつり上げて救出したと発表した。軍事専門メディア「オボロンカ」の報道として読売新聞が伝えたところによると、北東部の前線地帯から15キロ以上離れた施設に兵士が搬送されたとみられる。
現場一帯には地雷が多数設置されており、ロシア軍の進路妨害によって無人車両が近づけないケースもある。そのため陸路での救出は極めて困難であり、ウクライナ軍は最大積載量130キログラムの大型無人機を改良するなどして約6カ月かけて作戦を準備したと読売新聞は報じている。
最後の手段とされる大型無人機の運用と技術的背景
ウクライナの政府系イノベーション支援プラットフォーム「Brave1」でドローン部門を率いるデニス・ロフヴィネンコ氏は、BUSINESS INSIDER JAPANの取材に対し、この大型ドローンについてコメントしている。負傷兵が自力で歩けず、ほかの搬送手段も使えないという極めて危険な状況下で、一刻を争う救出を可能にする手段だと説明した。
ウクライナでは複数の企業が負傷兵を戦場から搬送できる重量物運搬用の大型ドローンを開発している。グルズフ・ディフェンス製のヘキサコプターが今回の任務に使われ、スカイフォールなども独自の機体を発表している。ただし関係者は、リスクが高いため、使用するのはあくまで最後の手段にとどめるべきだと語っているとBUSINESS INSIDER JAPANは伝えている。
作戦を支えたおとり機体と安全装置の伝達手法
読売新聞の報道によると、今回の救出作戦では遠隔操作で着陸した無人機に兵士が自ら体を固定した後、浮上する様子を映した動画がSNSで公開された。安全装置の使い方などを伝える動画を収めた携帯電話が無人機で兵士に届けられ、救出方法が説明されたという。
さらに、飛行中の敵からの攻撃を防ぐため、おとりの無人機も複数飛ばされた。ウクライナ陸軍は「救出の新たな段階だ」と強調し、無人機による空路搬送の導入を本格的に検討する考えを示していると読売新聞は伝えている。
戦車戦術の変化とドローンによる最前線での護衛
Forbes JAPANによると、ウクライナ軍の戦闘部隊の編成において戦車は歴史的に中心的な役割を与えられてきた。2022年2月のロシアによる全面侵攻開始後、機甲部隊は初期の攻勢を撃退するうえで重要だったが、ドローンの急速な普及により機甲戦力の役割は縮小していた。
過去1年も両軍は徒歩兵による作戦を中心にしていたが、ウクライナ軍は現在進めている反攻作戦を支援するため、戦車などの装甲車両を再び戦場に投入する試みを進めている。東部ハルキウ州アニシュチネ周辺の前進では新たな戦術が用いられたとForbes JAPANは報じている。

随伴する小型および重爆撃ドローンによる防護体制
10月にソーシャルメディアに投稿されたウクライナ陸軍第475独立強襲連隊「コード9.2」の動画では、戦車1両とM2ブラッドレー歩兵戦闘車1両が未舗装路などを前進する様子が示されている。Forbes JAPANの報道によると、移動中の車両には複数のドローンが随伴し、防護している。
小型のFPVドローンが周囲を飛び、敵の接近するFPVドローンを終末軌道からはじき飛ばして撃破した。さらに、バンパイア重爆撃ドローン2機が先回りしてロシア軍の陣地を偵察し、戦闘陣地と疑われる地点に爆弾を投下している様子も確認できるとForbes JAPANは伝えている。
大型ドローンの標的リスクと今後の見通し
米国海軍分析センターのドローン戦専門家サミュエル・ベンデット氏は、BUSINESS INSIDER JAPANの取材に対し、大きなドローンはそれだけ標的にもなりやすいという課題を指摘している。ロシア軍の一部の精鋭部隊がこうした機体の撃墜に注力している状況がある。
ウクライナ軍は兵站任務にも大型ドローンを使用しており、小型機よりも多くの荷物を運べる利点がある。地雷や敵のドローンが飛び交う前線において、無人機を活用した空中救出や物資搬送の成否は、今後の戦術展開を大きく左右する要因となりそうだ。
