元戦場カメラマン系VTuberの旅野そらさんが10月7日、YouTubeでライブ配信を実施し、レバノン・シリア取材動画に寄せられた批判や疑問へ約1時間にわたって回答した。KAI-YOUの報道によると、安全対策や収益化、エンタメ的発信に対する自身の考えを説明したという。
レバノン到着直後に急変したイラン情勢と現地取材の背景
旅野そらさんは2024年3月から活動するVTuberである。過去に戦場カメラマンや週刊誌ライターとして活動していた経験を背景に、国際政治や戦争、宗教、地政学などを扱う配信を行っている。KAI-YOUの報道によれば、10月6日に公開された動画「【ヤバい】空港から出た瞬間戦争が始まった。爆撃音が鳴り響くシリア・レバノンに閉じ込められました」は、2026年2月末に行ったレバノン/シリア取材を約14分にまとめたVlogだ。旅野そらさんがレバノンへ到着した2024年2月28日には、米国とイスラエルによるイランへの攻撃が開始された。シリアとの国境を越えてダマスカスへ移動する様子や、街中で爆発音が響く様子などが収録されている。現地の人々が爆発音をさほど気に留めず、ラマダン明けの食事を楽しむ姿も映されている。滞在中には案内役の男性の自宅が被害を受けたほか、帰国便もキャンセルとなった。旅野そらさんは動画内で、攻撃によるものか迎撃されたミサイルの落下によるものかなど、現地でも被害の詳しい原因を把握できなかったケースがあったと説明している。
シリア渡航を決めた理由と現地の安全対策
10月7日の配信で旅野そらさんは、取材動画が配信開始時点で約10万再生を記録したと説明した。X上でも約437万インプレッションに達し、それまで自身の活動を知らなかった層にも広く届いたという。その一部からは強い批判も寄せられた。旅野そらさんはリスナーに対し批判者への反論を控えるよう呼びかけ、自身の活動についても批判されること自体は仕方がない活動と語っている。取材の背景には、2024年12月のアサド政権崩壊を受け、これまで自由に発言することが難しかった市民から新しいシリアについての考えを聞きたいという思いがあったという。加えて、旧アサド政権下で政治犯らが収容され拷問や処刑の実態が報告されてきたサイドナヤ刑務所への取材許可を得られたことから、この機会を逃したら次はないかもしれないと渡航を決めたと説明している。紛争地での取材では、原則として現地のコーディネーターを雇い、地域の状況に応じて通訳やドライバー、護衛などと協力しているという。今回のシリア渡航についても事前に許可を取った上で行いましたと述べた。旅野そらさんは、紛争地の実情を伝えるためには危険な場所へ行かなければならない場合があるとする一方、その必要性を感じない人から批判が出ることも当然だと自身の考えを語っている。
「戦争をエンタメにするのは不謹慎」という批判への回答
旅野そらさんは、VTuberとして活動する理由について、従来のジャーナリストとして海外取材を続けることの難しさを挙げている。海外取材には多額の費用が必要になる一方、国際政治や中東に関する情報は大きな数字につながりにくく、既存メディアでは発表する機会や切り口にも制約があると説明した。エンタメとして親しまれているVTuberだからこそ、国際政治や紛争に普段は関心を持たない人にも情報を届けられるとして、情報を広く届けることがやっぱりジャーナリストの存在意義と語っている。「数字目当て」「金目当て」という批判についても、数字や取材費は必要だと認めつつ、中東や紛争はそもそも継続的な再生数を得にくい題材だと説明した。さらに、「戦争をエンタメにするのは不謹慎ではないか」という問いには、「不謹慎なんだよ。そらのチャンネルは本当に不謹慎」と回答している。その上で、YouTubeは娯楽コンテンツが並ぶ場所であり、まず興味を持ってもらわなければ、その先の理解にもつながらないと説明した。また、紛争地で暮らす人々を悲劇やかわいそうな市民といった画一的なイメージだけで描くことにも疑問を呈する。戦争のさなかでも人々には日常があり、子どもは笑い、冗談やブラックジョークも交わされる。そうした現地の姿も含めて伝えたいという考えを語っている。
サイドナヤ刑務所の映像公開に向けた今後の編集作業
旅野そらさんは現在、今回のシリア取材で訪れたサイドナヤ刑務所の映像についても、どのような形で公開するか検討しながら編集を進めているという。KAI-YOUが報じたこの一連のライブ配信および動画公開を通じて、SNSやYouTube上では紛争地における取材のあり方や情報の伝え方を巡り、様々な議論や意見が交わされている。