1766365587
2025-12-21 21:40:00
10年以上前、グーグルは自社が目指すAI開発のために、より強力で特化した計算能力を必要としていた。現在GroqのCEOを務めるジョナサン・ロス(Jonathan Ross)氏が率いたチームは機械学習に特化した特定の集積回路を基に新たなチップを設計した。こうしてTPUが誕生したのだ。
グーグルはその後もTPUの改良を続け、モデルの学習と推論(学習済みモデルが質問に答えたりタスクを実行するプロセス)の両方でより効果的なものへと進化させてきた。大規模言語モデル(LLM)のサイズが増大するにつれ、グーグルは後継のTPUのメモリ帯域幅も増強し、より大きなワークロードに対応できるようにした。
グーグルによると、現在広く提供している最新のTPU「Ironwood」は、前世代と比べてトレーニングと推論の両方で4倍以上の性能向上を実現している。
TPUとエヌビディアのGPUの違いは何か
エヌビディアのグラフィックカードは1999年に登場し、当初はAIではなくゲーム向けに設計されていた。後に研究者がこのチップがニューラルネットワークのトレーニングなどに有用であることを発見するとエヌビディアはAI市場に注力するようになった。
一方、グラフィックのTPUは最初からAI向けに設計されていた。より特化されているため、特定のタスクではエヌビディアのチップより効率的で、特定のAIモデルの実行ではより高速だ。シストリック・アレイと呼ばれる、メモリからデータを繰り返し取得する必要がなく、チップ内をより安定したデータストリームで通過させられるアーキテクチャを採用しているからだ。
グーグルのTPUが大きな優位性を発揮するのは、大規模運用時のコスト面だ。単一の「ポッド」内で数千のTPUを連携させて動作させることも可能だ。特定の計算においてGPUよりも高速なため、多数のTPUを同時に稼働させる方がコスト効率が良い場合がある。
企業が推論段階への投資を拡大する中で、この点はより重要になるかもしれない。グーグルによれば、最新のTPUは推論処理に特に優れているという。これにより企業はコスト削減が可能となる。
顧客がGPUからTPUに切り替えるのを妨げているものは何か
エヌビディアがグーグルに対して持つ優位性のひとつは、プログラミング環境の「CUDA」だ。これによりアプリケーションが、グラフィックスだけでなく一般的なコンピューティングタスクにGPUを利用できるようになる。またCUDAはエヌビディアのチップでしか動作しない。これがグーグルのチップへの切り替えを阻む最大の障壁だ。
グーグルはこの状況を変えようとしている。例えば、業界ではメタで開発されたAIアプリケーション構築ツール「Pytorch」へのTPUのサポート強化が強く求められている。グーグル社員や業界専門家によれば、データはグーグルのTensorflowよりもPytorchへの需要がはるかに高いことを示しており、グーグルはPytorchへの対応にリソースを増やしている。
TPUを使っているのは誰なのか
TPUに関して言えば、グーグル自身が依然として最大の顧客だ。同社は検索やマップなどの製品を動かすため、社内でTPUチップを活用している。最新のGemini 3モデルもTPUで訓練された。
グーグルは自社のニーズを優先しつつも、TPUを他社に貸し出している。Business Insiderの過去の報道によれば、アップル(Apple)は自社のAIモデルの訓練にTPUを使用した。10月にはアンスロピック(Anthropic)がグーグルとの大型契約を発表し、最大100万個のTPUを使用すると表明した。TPUチップの製造を支援するブロードコム(Broadcom)は今週の第4四半期決算説明会で、アンソロピックからグーグルのIronwood TPUに対して総額210億ドル(約3兆2550億円、1ドル=155円換算)の受注を獲得したと明らかにした。
関係者によれば、メタもグーグルのTPUを初期テスト中だが、長期契約に発展するかは不明だ。
グーグルとエヌビディアにとって何を意味するのか
グーグルのTPU事業は今後数年で急成長する可能性がある。今月の調査レポートでモルガン・スタンレーは、TPUチップが50万個販売されるごとに、2027年にはグーグルの収益が約130億ドル(約2兆150億円)増加する可能性があると記した。
TPUの保有はグーグルにとって単なる収益増加の可能性ではない。TPUを使ってAIモデルを実行・訓練し、そこから学ぶことで、グーグルが必要とする分野でより優れた性能を発揮する次世代チップの開発方法を変えるというフィードバックループも得られるのだ。
エヌビディアのGPUは依然として主流のチップだが、他のテック大手も自社カスタムチップに資源を注ぎ込む動きを強めている。アマゾン(Amazon)は新開発のAIチップ「Trainium3」を発表した。同社によれば、GPUと比較してAIモデルの訓練と稼働コストを半減できるという。
多くのTPU購入者はエヌビディアの顧客でもある。業界関係者によれば、より専門性の高いチップの台頭により、企業や研究所は単一ベンダーに依存するよりも、使用するチップを多様化する可能性が高いという。
これはエヌビディアに打撃を与えるだろう。市場が多様化すれば、同社の価格決定力が弱まる可能性があるからだ。
しかし、仮にグーグルのTPU事業が勢いを増しても、エヌビディアが一夜にして崩壊するわけではない。調査会社SemiAnalysisの技術スタッフ、ジョーダン・ナノス(Jordan Nanos)氏は、エヌビディア、グーグル、アマゾンを含む各社が今後も「大量のチップを販売」すると考えていると述べた。
「TPUがエヌビディアのビジネスに重大な脅威となるとは見ていませんが、長年、市場で確固たる地位を築いてきた存在であることは事実です」とナノス氏は語る。
将来的にはグーグルがTPUサーバーを外部に販売し、より多くの顧客を獲得する可能性はあります。ただし現時点では、彼らは販売先を非常に厳選しています。
#TPUはエヌビディアの脅威となるのかグーグルのAIチップについて知っておくべきこと #Business #Insider #Japan