2026年8月12日(水)、イギリス全土で部分日食が観測されます。ロイヤル天文台グリニッジ(Royal Observatory Greenwich)によると、今回の現象は1999年以来、英国で観測される中で最も規模の大きい(most complete)日食となります。専門家は、今回と同等の規模の日食が再び英国で観測されるのは2081年まで待たなければならないと指摘しています。
観測時間と地域別の影響
今回の部分日食では、太陽の90%から95%が月によって遮られます。特に南西部では太陽の約95%が隠れ、ロンドンでは約90%が遮られる見込みです。ロイヤル天文台グリニッジの算出によるロンドンでのスケジュールは、18時17分(BST)に開始し、19時13分に最大となり、20時06分に終了します。
地域別の「ファーストコンタクト(月が太陽の円盤を覆い始める瞬間)」の時間は以下の通りです。
- スコットランド:18時08分
- マンチェスターおよびリバプール:18時13分
- ロンドン、ブリストル、カーディフ:18時17分
- コーンウォール:18時18分
日食のピークは、観測地点が南にあるほど遅くなり、19時05分から19時16分の間に起こります。英国全土での現象は20時10分までには終了する予定です。観測にあたっては、建物や木々に遮られていない、西の地平線が見渡せる場所を探すことが推奨されています。
視力への深刻なリスクと安全な観測方法
英国保健安全庁(UKHSA)は、適切な保護具なしに太陽を直視すると、数秒以内に網膜に永久的な損傷を与える可能性があると警告しています。日食中は太陽が通常より暗く見えるため、身体が本来持っている「目を逸らす」という反射機能が働きにくくなり、強い日光が網膜に届きやすくなるためです。この損傷は痛みなしに起こるため、被害に気づいたときには既に遅い場合があります。

過去の事例として、1999年の日食後、王立眼科医大学(Royal College of Ophthalmologists)は約70件の視覚障害事例を報告しており、そのうち約40%は1分未満の観測であったとされています。また、一般的なサングラスは、どれほど色が濃いものであっても十分な保護性能はありません。ISO準拠の日食グラスは、一般的なサングラスよりも約10万倍暗い設計となっています。

安全に観測するための推奨方法は以下の通りです。
- 認定日食グラスの使用: 「ISO 12312-2」または「ISO 12312-2:2015」の安全認証が記載されたものを使用してください。レンズに折り目や傷がある古いグラスはフィルター性能が低下している可能性があるため、新調することが推奨されています。
- 間接的な観測方法: 専用グラスがない場合は、ピンホールビューアやピンホールプロジェクターを使用してください。具体的には、colander(水切りボウル)を掲げてその影を見る方法や、地面に落ちた木の葉の隙間から漏れる光(天然のピンホールプロジェクター)を観測する方法があります。また、シリアルボックスでピンホールカメラを作成する方法も挙げられています。
なお、カメラ、望遠鏡、双眼鏡を通して太陽を直接見ることは絶対に避けるよう専門家は警告しています。
世界的な状況と科学的意義
今回の現象は、欧州大陸では20年ぶりの皆既日食となります。スペインの広い範囲(北部および中部)に加え、ポルトガルの一部、グリーンランド、アイスランドでは、太陽が完全に遮られる皆既日食が観測されます。スペインの皆既日食帯では、現地時間の20時26分から20時33分の間にピークを迎えます。
米国でも部分日食が観測され、アラスカからノースカロライナ、およびカナダの大部分を含む北半球の多くの地域で体験できるとNASAが述べています。米国では26州とワシントンD.C.で観測可能です。
科学的な側面では、日食は通常は見ることができない太陽の外層大気である「コロナ(solar corona)」を研究する貴重な機会となります。ロイヤル天文台グリニッジは、8月12日に日食の様子をライブストリーミングで配信する予定です。