2026年9月3日付のワシントン・ポスト紙で、デイヴィッド・イグネイシャス記者は米国の不在が欧州の戦争を招いていると警告した。米議会と米外交・情報関係者が行った戦争ゲームでは、米国の対応が中途半端な場合NATOの集団防衛体制が形骸化し、世界大戦が近づくシナリオが示された。.
戦争ゲームが示すNATO崩壊の危機と欧州分断のシナリオ
2028年を想定した模擬演習は、ウクライナ戦争が血生臭い膠着状態にある中、ロシアがモルドヴァへ侵攻し、欧州の分断を画策する事態を予測している。このシナリオにおいて、ロシアの無人機がNATO加盟国ルーマニアの燃料庫を攻撃し、民間人に死傷者が出たものの、米国の対応は中途半端なものにとどまった。この演習結果は、北大西洋条約機構(NATO)の第5条がもはや死語に近いことを示唆している。81年間、米国と欧州の安全保障を支えてきた枠組みは、米国の指導力なしには維持できず、欧州が分断される未来が現実的な脅威として浮かび上がっている。
グレイゾーンから流血へ変貌するハイブリッド戦争
ウクライナ戦争はもはや国境を越え、NATO諸国全体へと拡大している。ロシアによるハイブリッド戦争は、かつてのグレイゾーンを脱し、既に流血を伴う事態へ移行した。3月以来、欧州の標的に対して無人機攻撃、破壊工作、サイバー・電子戦攻撃、そして海洋での事件を含む63もの攻撃が確認されている。米国はこれらの挑発に対して抑止のための行動をほとんど取っておらず、プーチン政権は欧州の武器供給国を直接攻撃することで戦況の優位を確立しようと試みている。
ロシアが公表した潜在的目標と欧州企業への破壊工作
ロシア国防省は4月、ウクライナに無人機や部品を供給する欧州の21社の名称と住所を「潜在的目標」として公表した。この警告は単なる脅しにとどまらず、8月にはエストニアのミレム・ロボチック、ブルガリアのEMCO、イタリアのKNDS弾薬といった供給拠点で実際に破壊活動が発生した。これらの攻撃の多くは、背後にロシアの関与を隠蔽するために地元のギャングが実行犯として利用されている。プーチンが兵器供給の遮断を目的に、欧州の産業基盤を直接的な戦場に引きずり込んでいる事実は、極めて深刻な状況だ。
ドイツと英国が直面する防衛の最前線
ドイツはライプツィヒ空港での貨物便を狙ったドローン攻撃を受け、ロシアを公然と告発した。ドイツ外相は、一連の攻撃がロシアによる「長い鎖」の一部であると指摘し、内相は「毎日ハイブリッド戦争の被害者だ」と危機感を露わにした。ドイツ政府は外交措置に加え、ロシア産石油を密輸する「影の船団」への監視強化を表明している。一方、1年以上にわたり破壊工作に直面してきた英国は、バーナム首相がキーウを訪問するなど、より強硬な姿勢を維持し、フランスと共にウクライナの先進巡航ミサイル開発を支援する方針を打ち出している。
米国が取るべき抑止力回復への具体的な措置
エスカレーションが続く中、米国は再び大西洋同盟のリーダーとして行動を再開する必要がある。イグネイシャス記者は、トランプ政権が取るべき具体策として、まずは同盟国と共にロシアの攻撃が深刻な結果をもたらすと警告する共同声明の発出を挙げた。さらに、プーチンがウクライナの都市攻撃を継続する場合、ウクライナがロシア国内の目標に対して均衡のとれた攻撃を行えるよう静かに支援すべきだとしている。また、国防省は欧州駐留米軍の再点検を直ちに停止し、同盟の結束を再確認しなければならない。
和平達成に向けた米国の軍事的梃子の重要性
トランプ大統領は、ウクライナと欧州を軍事的に強化する過程で得られる影響力を駆使し、停戦と和平の実現を目指すべきである。現状を放置することは、プーチンに対する抑止力を失うだけでなく、欧州の同盟国が孤立無援の絶望感に駆られ、制御不能な状況へ陥るリスクを孕んでいる。米国の軍事的優位性は、単に戦争を遂行するためだけでなく、戦争を終結させるためにこそ存在すべきだ。今後の見通しとして、米国が指導力を回復できなければ、欧州での紛争はさらに深刻な世界大戦へと発展する可能性が日に日に高まっている。