元セラノス(Theranos)社CEOで、投資家への詐欺罪により11年以上の禁錮刑を言い渡されたエリザベス・ホームズ氏の収監直前を捉えたドキュメンタリー映画『You Can See Everything』が、A24より10月に劇場公開されることがわかりました。
本作は、カルト的な人気を誇るコメディアンのネイサン・フィールダーと映画監督のランス・オッペンハイムが共同監督を務めた174分の作品です。テルライド映画祭にてサプライズ上映され、大きな注目を集めました。
収監前34日間の密着記録
映画の舞台は2023年5月、ホームズ氏が刑務所に報告する34日前から始まります。彼女はパートナーであるカリフォルニアのホテル相続人ビリー・エヴァンス氏と、幼い娘を含む2人の子供と共に、デルマーにある広々としたビーチサイドの邸宅で暮らしていました。

ホームズ氏は、自由な身で過ごす最後の数日間を記録してほしいと考え、フィールダーら制作陣に自宅への立ち入りと撮影を許可しました。フィールダーは単にカメラの後ろに留まるのではなく、彼女の考えを理解しようと対話を重ね、最終的には自宅に滞在して彼女の私的な側面にまで深く踏み込むという、異例のアクセスを得ました。
「真実」を巡る心理的な攻防
本作は単なる記録映画ではなく、フィールダーの鋭い問いかけとホームズ氏の反応が交錯する「サイコドラマ」のような構成となっています。劇中、ホームズ氏は自身の罪について問われた際、奇妙な無知を装い、自分は何も悪いことはしていないと主張しています。
公開された予告編では、ホームズ氏がまばたきをほとんどせず、大きく見開いた目でフィールダーに対し、私はそういう人間ではないやなぜあなたを騙す必要があるのかと、自身の誠実さを強く訴える様子が描かれています。フィールダーは上映後のコメントで、家の中で起きていたことについて、知的な人々が集まっても合意に至ることができなかったと述べ、自身が体験したことを今でも理解しようと苦心していると明かしました。
セラノス社の崩壊と新たな計画
ホームズ氏はかつて、指先から得られるごく少量の血液であらゆる検査が可能な画期的なデバイスを開発したと主張し、ルパート・マードック氏やラリー・エリソン氏ら著名な投資家から数百万ドルを調達しました。これにより、セラノス社は90億ドルの企業価値を持つとされ、彼女はアメリカ最年少の女性自作億万長者としてセレブリティとなりましたが、実際には完全な詐欺であったことが判明しました。

専門家による分析と作品の意図
制作陣は、ホームズ氏が自身の描かれ方に異議を唱え、ナラティブ(物語)をコントロールしたいと考えていたことを示唆しています。本作は彼女に明確な心理的回答を与えるのではなく、彼女が撮影者を操作しようとしていたのか、あるいは本当に自分を外界とは異なる人間だと信じ込んでいたのかという、不快な問いを観客に投げかける内容となっています。
【作品概要】
| タイトル | You Can See Everything |
|---|---|
| 監督 | ネイサン・フィールダー、ランス・オッペンハイム |
| 配給 | A24 |
| 上映時間 | 174分 |
| 公開予定 | 10月 |