人工知能開発を手がけるAnthropicは10月26日、米証券取引委員会(SEC)に対してS-1登録書類を提出し、ナスダック市場への新規株式公開(IPO)へ向けた手続きを開始したことを明らかにしました。ティッカーシンボルは「ANT」を予定しており、中旬から下旬にかけて実施される見通しの株式公開は、史上最大規模の一つになると予測されています。
Anthropicの新規株式公開に向けたS-1提出と市場規模
約6年前の設立以来、Anthropicは急速な成長を遂げ、米国企業の大部分を凌駕する巨額のキャッシュを保有するに至りました。6月30日時点の財務データによると、同社は1124億ドルの現金および現金同等物に加え、193億ドルの短期投資を保有しており、合計で1317億ドルに達しています。
CNBCおよびS&P Capital IQのデータによれば、この総額はバークシャー・ハサウェイおよびアルファベットを除くすべての非金融系米国企業を上回る規模です。さらに、新規株式公開での資金調達額次第では、保有する現金が2300億ドル規模に達する可能性も指摘されています。
Amazonの巨額投資と転換社債の仕組み
今回の公開において、ベンチャーキャピタルであるメンロ・ベンチャーズ、セコイア・キャピタル、サウンド・ベンチャーズ、スパーク・キャピタルなどの初期出資企業は巨額のリターンを手にする見込みです。一方で、S-1書類によれば、これらのVCはいずれも主要株主の基準となる5%を超える持分を保有しておらず、異例の構成となっています。

最大級の勝者と位置づけられているのが、初期段階から支援を行ってきた米アマゾン・ドット・コムです。アマゾンは当初の出資の多くを転換社債として実行しており、6月30日時点で62億ドルの元本が未償還となっています。その後、各資金調達ラウンドで合計100億ドルの議決権なみのない優先株式も取得しており、ノートに関する投資を含めた総投資額は約180億ドルに達しています。
巨額のインフラ投資と財務実績の全貌
Anthropicは2026年上半期に163億ドルの売上高を記録し、前年同期の12億ドルから約13倍の急成長を示しました。その一方で、同期の純損失は807億ドルに計上されています。この損失の大部分にあたる約724億ドルは、転換社債やデリバティブ負債、SAFEなどの公正価値の変動によるものであり、同社は財務諸表の注記でその旨を報告しています。

しかし、この強固な財務基盤の先には、強烈なインフラ義務が待ち構えています。同社はクラウドサービスや計算インフラの確保に向けて大規模なコミットメントを結んでおり、主要なパートナーとの契約内容には以下のような長期支出が含まれています。
- AmazonのAWSに対して、2036年4月までに少なくとも1,100億ドルを支出する計画。
- Googleに対して、2033年までに1,150億ドルを支出する計画。
- Microsoftに対して、2033年までに450億ドルを計算インフラのために支出する計画。
厳格な創業者支配と93ページに及ぶリスク要因
一般市場の投資家を迎え入れるにあたり、Anthropicは経営の独立性を守るための複雑なガバナンス構造を構築しました。<a href=”https://www.theverge.

また、S-1提出書類の3分の1近くにあたる約90ページがリスク要因の解説に割かれています。CBS NewsやABCニュースの報道では、AIモデルが自律的に動作して予期せぬ行動をとる可能性や、サイバー攻撃、データセンターの電力不足に対する懸念が詳細に記されています。<a href="https://www.cbsnews.
ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのデヴィッド・スー教授はCBS Newsに対し、「同社は投資家に対し、安全性よりも能力が急速に向上する可能性があることを認めつつ、より自律的なAIの開発競争への資金提供を求めている」と述べた。