舞台版『パラノーマル・アクティビティ』が、ロンドンのアンバサダー劇場で2026年3月28日まで上演されている。フェリックス・バレットが演出を手がける本作は、映画版の恐怖をライブの舞台で再現する試みであり、観客を恐怖の渦に巻き込む没入型の演出が特徴となっている。また、同時期にはサンフランシスコのACT(アメリカン・コンサバトリー・シアター)のトニ・レンベ(ギアリー)劇場でも、2026年3月22日まで別プロダクションが上演されている。
アンバサダー劇場での上演と演出の狙い
映画『パラノーマル・アクティビティ』シリーズは、計7作が制作されており、その第1作は投資収益率の観点から史上最も収益性の高い映画の一つに数えられている。現在、ロンドンのアンバサダー劇場で上演中の舞台版は、映画ファンにもおなじみの「身の毛もよだつ恐怖」をライブパフォーマンスとして提供している。演出のフェリックス・バレットは、デザイナーのフライ・デイヴィス、音響デザインのギャレス・フライ、照明のアンナ・ワトソン、そしてイリュージョン担当のクリス・フィッシャーらと協力し、劇場という空間を異様な雰囲気に変貌させた。フライ・デイヴィスが手掛けたセットは、当初は魅力的に見えるものの、終演を迎える頃には全く居心地の悪い空間へと変貌する。
観客は単に物語を見るだけでなく、劇場の座席周辺(少なくともストール席において)で起こる演出にも注意を払うよう促される。公演プログラムには、詳細を明かさないように求めるチラシが同封されており、物語の核心に触れないことが暗黙のルールとなっている。これは、ホラー作品としての体験を最優先に考えているためだ。本作は、音響デザインによって観客を落ち着かせ、リラックスさせた直後に突然驚かせるような仕掛けが施されている。
物語の背景とキャストの挑戦
物語は、シカゴからロンドンへと移住してきた若いカップル、ルー(メリッサ・ジェームズ)とジェームズ(パトリック・ヒュージンガー)が、新しい住まいでの生活に適応しようとする過程を描く。二人の関係性や、ジェームズの母親(ピッパ・ウィンズロー)の干渉、さらには宗教に対する考え方の違いなどが背景として語られるが、彼らがなぜ海外移住を選んだのかという理由は意図的に曖昧にされている。また、キャストには、サイキック・インベスティゲーター(霊能調査員)役としてジャッキー・モリソンが出演している。

脚本を担当したのは、2023年に『グレイ・ハウス』でブロードウェイデビューを果たしたリーヴァイ・ホロウェイである。なお、サンフランシスコのACT版では、ルー役をチェール・アルバレス、ジェームズ役をトラヴィス・A・ナイトが演じている。
恐怖演出への評価と観客の反応
この舞台版は、2024年にリーズで初演されて以来、アメリカ各地での上演を経て現在に至る。近年、ロンドンでは『ゴースト・ストーリーズ』のピーコック劇場での再演や、『2:22 A Ghost Story』の複数回にわたる公演など、ホラー演劇のトレンドが続いている。本作には、 wonky electrics(不安定な電気系統)、突然の音楽の盛り上がり、ラジエーターがカタカタと鳴る音など、このジャンル特有のギミックがふんだんに盛り込まれている。批評家からは、「塗絵のような(決まりきった)」脚本であるという指摘もあるが、一方で「もし物語に没入し、音や照明、そしてストーリーの穴を受け入れることができれば、楽しい夜を過ごせるだろう」と評されている。
映画版の原点と舞台版の広がり
元となった映画版の『パラノーマル・アクティビティ』は、オーレン・ペリ監督がわずか11,000ドルという低予算で制作した。映画は、ケイティ・フェザーストン演じるケイティと、マイカ・スロート演じるマイカのカップルが、カメラを設置して怪奇現象を記録しようとする様子を描く。深夜の映画館で鑑賞した観客の中には、最初は低予算映画であることに懐疑的だったものの、次第にその恐怖に引き込まれていく層も多かった。舞台版はこの映画の遺産を継承しつつ、ライブならではの「どうやってこれを見せているのか?」という問いを観客に投げかけている。
