2023年1月にマサチューセッツ州デュクスベリーの自宅で3人の子どもを殺害した罪に問われているリンゼイ・クランシーの裁判で、2026年8月21日、弁護側が立証を終了しました。陪審団による評決は翌週にも下される見通しで、産後精神病の責任能力が最大の争点となっています。
リンゼイ・クランシー裁判:弁護側が10人の証人を呼んで立証を終了
マサチューセッツ州プリマウス上級裁判所で進められているリンゼイ・クランシーの裁判は、1週間に満たない証人尋問を経て、2026年8月21日の金曜日に弁護側が主張を締めくくりました。弁護人のケヴィン・レディングトンは、子どもたちが殺害されるに至った当時の精神状態について、10人の証人を法廷に立たせました。
弁護側は、事件当時、被告が重度の産後精神病に陥っており、自らの行動に対する刑事責任能力がなかったとする「心神喪失」の主張を展開しています。この精神障害は発症率が低く、適切な治療が行われなければ危険な精神医学的緊急事態を引き起こすとされています。
「命令幻覚」と外部からの力:精神科医と病院チャプレンの証言
裁判では、精神科医や専門家による証言が争点の中心となりました。著名な刑事事件の鑑定を手がけてきた法医学精神科医のフィリップ・レズニック博士は、金曜日の証言で、クランシーが事件前日に「外部の力」が自分の身体を乗っ取ったように感じていたと述べました。
被告によれば、その声は、もし命令に従わなければ自分も子どもたちも安全ではなくなると告げたという内容を、ブリガム女性病院チャプレンのシーラ・カヴァナが証言しました。

また、ブリガム女性病院で自殺未遂後の治療を受けていた被告と面会を重ねた病院チャプレンのシーラ・カヴァナは、被告が「男性の声が執拗に命令し続け、従わなければ自分も子どもも安全ではないと告げられた」と語っていたと証言しました。呼吸チューブが外れた直後の面会について、カヴァナは「私は子どもたちが無事で本当によかったと言った」と法廷で振り返っています。
検察側の反論:アヴラム・マック博士による反証と刑事責任能力
弁護側の立証終了を受け、検察側は陪審団の最終弁論を前に反論証人の尋問を開始しました。検察側は、被告が計画的かつ冷静に犯行に及んだと主張しています。最初の反論証人として出廷した精神科医のアヴラム・マック博士は、事件当日に被告が子どもたちを絞め殺しながら「神のもとへ行きなさい」と口に出していたと指摘しました。

マック博士は、被告が重度の抑うつ状態や不安に苦しんでいたとは認めつつも、防衛側が主張するような双極性障害の躁状態の証拠や、過剰服薬が精神病的な幻覚を引き起こしたという見方には疑問を呈しました。
法医学精神科医のアヴラム・マック博士は、被告がこれらの行為に対して刑事責任を負うために必要な能力を保持していたというのが自身の見解であると述べました。
マック博士は、被告が自身の行為の是非や法的な悪しき側面を理解する能力を維持していたとの見解を示しており、検察側と弁護側の専門家証言の間で意見が真っ向から対立しています。
陪審団による評決に向けた今後のスケジュール
裁判は週末を挟み、週明けにも双方による最終弁論が行われ、陪審団の審議に入る見通しです。マサチューセッツ州法の下では、被告が犯行時に精神疾患によって自身の行動の違法性を認識する能力を失っていたかどうかが、有罪か無罪かを分ける最大の焦点となります。全米の母親のメンタルヘルスケアに対する意識に深い波紋を投げかけた裁判は、いよいよ最終局面を迎えています。