ドナルド・トランプ大統領は2026年8月6日、出生地主義による市民権取得を制限する2つの大統領令に署名した。連邦最高裁が6月に同制度の撤廃を否定する判断を下したことを受け、政権は「バース・ツーリズム(出産観光)」の取り締まりや、特定の外国人による子供の市民権取得を制限する新たな手段を講じている。
最高裁判断後の新たな大統領令
トランプ大統領はホワイトハウスの執務室で新たな大統領令に署名し、出生地主義の制限を改めて試みた。大統領は署名式で、最高裁の判断を「非常に不公平」だと述べ、今回の措置は「別の方法で(出生地主義を)終わらせる」ためのものだと強調した。「我々の国はそれによって苦しんでいる。我々はそれを終わらせる」と語り、出生地主義が「冗談」のようになっていると批判した。「裕福な人々は出生地主義の周りにビジネスを構築している。それは本来あるべき姿ではない。恥ずべきことだ」と述べ、「彼らは金で市民権を買っており、我々はそれを許さない」と主張した。ホワイトハウスのスティーブン・ミラー上級顧問は署名に立ち会い、この取り締まりを「アメリカのシステムに対する最も重大で悪質な悪用の一つを終わらせ、アメリカ市民権の神聖さを守る」重要な行動だと評した。
制限の対象となるカテゴリー
今回の大統領令は、国土安全保障省および国務省に対し、ビザの取り消しや渡航認証の拒否を含め、バース・ツーリズムに関与する個人に対する管理を強化するよう命じている。大統領令が定める制限対象には、両親が外国政府職員、大使、または外国のテロ組織のメンバーである場合が含まれる。また、子供の市民権取得を目的とした「商業的取引」に関与した親や、米国で代理出産のために支払った親から生まれた子供も、出生地主義による市民権の対象外と規定されている。大統領令では「一時的な入国を求める外国人は、非移民の地位と相容れない永続的な利益を自身や子供に与えようとして移民法を回避することは許されない」としている。
憲法論争と法廷での見通し
今回の行政措置に対し、憲法上の権利を侵害するとして即座に批判の声が上がっている。論争の中心にあるのは、合衆国憲法修正第14条の「合衆国で生まれ、その管轄権に服するすべての者は、合衆国およびその居住する州の市民である」という条項である。チャック・シューマー上院院内総務は「トランプ大統領の出生地主義を終わらせるための継続的な運動は明らかに違法だ」と非難し、民主党として対抗措置をとる意向を示した。また、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事やアレックス・パディヤ上院議員も、憲法修正第14条の条文を引用し、大統領の姿勢を強く批判している。米国自由人権協会(ACLU)のコディ・ウォフシー移民権利プロジェクト副所長は「最高裁はこの問題をすでに決定している。憲法修正第14条が出生地主義を保証している」と述べ、今回の命令も前回と同様の結末を迎えると予測した。ケイトー研究所の移民政策アナリストであるデビッド・ビア氏は、最高裁が「以前の決定を執行するために迅速に介入することを期待する」と述べている。
出生をめぐる統計と実態
バース・ツーリズムの正確な規模については不透明な点が多い。疾病対策センター(CDC)は2024年に米国で外国居住者から生まれた子供は1万人未満と推計している。一方、移民制限を支持する団体である移民研究センター(CIS)は、2023年に一時滞在者が約7万人の子供を出産したと推計している。これらの統計に基づくと、観光目的の出産は、米国で毎年生まれる約360万人の子供のうち、ごくわずかな割合を占めるに過ぎない。
