米上院はロシアとイランに対する制裁法案を圧倒的な賛成多数で可決しました。故リンデイ・グラハム上院議員の名前を冠したこの法案は、ロシア産石油・ガスの主要な買い手に圧力をかけることを目的としており、下院での審議を残しています。
米上院は、ロシアとイランによる侵略や安全保障上の脅威に対抗するための追加制裁を盛り込んだ総計61ページの法案を可決しました。採決の結果は賛成86、反対11の圧倒的な大差であり、長引く停滞を経ての成立となりました。
故リンデイ・グラハム上院議員の遺志を継ぐ制裁法案の全貌
本法案は、法案の成立に尽力した故共和党のリンデイ・グラハム上院議員の功績を称え、「リンデイ・O・グラハム・ロシア・イラン制裁法(Lindsey O. Graham Sanctioning Russia and Iran Act of 2026)」と改称されました。
法案の主眼は、ロシア経済の生命線である石油・ガスの売却益を断つことにあります。具体的には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や最高幹部に対する新たな制裁や渡航制限のほか、ロシア製品に対して最大500%の関税を科す権限が盛り込まれています。
さらに、ドナルド・トランプ大統領の強い要求を受けて追加された権限により、ロシア産エネルギーを大量に輸入する上位5カ国・地域に対し、最大100%の追加関税を科すことが可能となります。また、トランプ政権と米国外交団が中東での平和合意模索を続ける中、イランの兵器・エネルギー部門への資金流入を抑え込むための制裁権限の延長も含まれています。
Today, President Zelenskyy is watching from Ukraine, and Putin is watching from Moscow, I would like to think that Lindsey Graham is watching, too. リチャード・ブルーメンソール(民主党、コネチカット州選出上院議員), via Fox News
超党派の合意形成の背景とウクライナ情勢への影響
グラハム議員はサウスカロライナ州選出の上院議員としてウクライナ支援の先頭に立っていましたが、先月、キエフ訪問後の不慮の死により71歳で急逝しました。その直後、上院指導部は故人の遺志を継ぐ形で合意に達しました。
グラハム議員の遺志を引き継ぎ、その議席を継承した実妹のダーライン・グラハム上院議員は次のように強調しています。

This bill forces those primary countries keeping Russia’s economy afloat to make a simple yet critical choice – a choice between doing business with America or buying cheap Russian energy, This legislation tells Russia’s customers that the United States of America will not sit by while they fund Putin’s assault. ダーライン・グラハム(共和党、サウスカロライナ州選出上院議員), via The Guardian
上院のジョン・チューン院内総務もフロア演説において、第二次世界大戦以降ヨーロッパで最大の紛争となっているウクライナの現状に触れ、プーチン大統領が持つ石油・ガスの売却資金こそが戦争継続の原資であると指摘しました。
トランプ大統領の関税権限を巡る民主党と共和党内の摩擦
法案の成立には圧倒的な賛成が集まったものの、共和党のランド・ポール上院議員や一部の民主党議員からは強い反対や懸念の声も上がりました。最大の争点となったのは、大統領に与えられる広範な関税権限です。

ポール上院議員は、ロシアと協調関係にある大国に対して100%の関税を科すことは逆効果を生むと主張し、アメリカの戦略的立場を危うくすると警鐘を鳴らしました。
ランド・ポール上院議員は、こうした関税は世界の舞台におけるアメリカの戦略的地位を損なう恐れがあると述べ、中国にロシアから距離を置かせるために関税が有効だと素朴に考える向きもあるが、実際にはその逆の結果になるかもしれないと指摘しました。ランド・ポール(共和党、ケンタッキー州選出上院議員), via Fox News
民主党のロン・ワイデン上院議員も、法案はトランプ氏に対して免除や修正の裁量を過度に与えるものであり、議会による事後的な引き戻しメカニズムが存在しないと批判しました。また、下院外国委員会の民主党トップであるグレゴリー・ミークス議員も、同法案がヨーロッパの同盟国に対しても悪影響を及ぼし、トランプ氏に裏口からの関税権限を与えるものだと警告しています。
下院の動向と今後の見通し
上院を通過した同法案は、現在、共和党が多数派を握る下院へと送られています。下院での審議は、議員らが8月末まで休会期間に入っているため不透明な状況となっています。