2023年2月に香港の人気モデル、アビー・チョイさんが殺害された事件の裁判が9月21日に始まりました。元夫ら3人が殺人罪に問われており、法廷では防犯カメラに残された犯行の生々しい記録や、遺体を隠蔽するための周到な準備工作が次々と明らかにされています。
元夫ら3人が殺人罪を否認する裁判の開始
香港の人気モデル、アビー・チョイ(蔡天鳳)さん(当時28)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われている元夫のアレックス・クォン被告(32)、元義父のクォン・カウ被告(69)、元義兄のアンソニー・クォン被告(35)の裁判が、9月21日に開始されました。3人はいずれも殺人罪を否認していますが、法廷では事件当日の詳細な状況が検察側から示されています。海外ジャーナリストの報告によると、アビーさんは2023年2月21日、娘を学校へ迎えに行くため、運転手として雇っていた元義兄の車に乗車しました。その後、午後2時44分に知人へ送った音声メッセージを最後に消息を絶ち、3日後に香港北東部・大埔(タイポー)の龍尾村にある家屋で遺体の一部が発見されました。
「重要なのは煮ること」防犯カメラが捉えた犯行の兆候
法廷で再生された防犯カメラ映像には、事件の緊迫した様子が記録されていました。映像には、元夫ら3人が大埔の家屋に到着し、車を降りる場面が収められています。その際、広東語で「重要なのは煮ることだろ」と話す男性の声が残されていたと検察側は指摘しました。さらに、検察側は事件当日の状況について以下のように説明しています。
- 午後3時過ぎ:元夫と元義父、元義兄が到着し、大きな箱を室内へ運び込んだ。
- 午後4時ごろ:家屋から電動ノコギリの音が聞こえ、料理をしているようなにおいが漂った。
- 服装の変化:元夫は約6分間車内にとどまった後、白い上着から黒い上着に着替えていた。
検察側の見立てでは、元夫は車内でアビーさんを押さえつけ、ハンマーで頭部を殴打したとされています。
周到に準備された犯行計画と凶器の購入
犯行は突発的なものではなく、周到に計画されていたと検察側は主張しています。元義父は事件の約20日前に不動産業者を通じて現場となった家屋を内見し、採寸を行っていました。防犯カメラの記録によれば、2月2日から事件当日までの間に、被告らは計18回にわたり当該家屋を訪れていたことが確認されています。また、元義父と元義兄は電動ノコギリ、肉挽き機、大型鍋、冷蔵庫などを事前に買いそろえていました。元義父は店員に対し「骨を砕ける機械はないか」と尋ねるなど、遺体の処理方法を具体的に模索していた様子も明らかになっています。
遺体発見時の異常な状況と臭い消しの工作
警察が大埔の家屋を捜索した際、冷蔵庫からアビーさんの両脚が、鍋の中から頭部、肉片、髪の毛が発見されました。検察側の説明によると、鍋の中には遺体とともにニンジンや青大根も入れられていたといいます。これは遺体を食べる目的ではなく、身元を隠蔽するために煮込み、その際の異臭を野菜で消そうとした工作であったと検察は指摘しています。また、検察側は元義兄がコーヒーチェーン店で元夫と過ごしていた際、頭を横に傾ける動作をしていたことについて、ハンマーで殴られた後のアビーさんの姿勢をまねていた可能性があると法廷で指摘しました。
14億円の高級マンションをめぐる家族間のトラブル
殺害の背景には、約6800万香港ドル(約14億円)相当の高級マンションをめぐる金銭トラブルがあったとされています。アビーさんは元義父をそのマンションに住まわせていましたが、自身の名義にした際の税負担を避けるため、登記上は元義父の名義にしていました。しかし、2022年にアビーさんが売却を計画したことで元義父が猛反発。アビーさんが死亡すれば名義がそのまま残ると考えた元義父が殺害を計画したというのが検察側の主張です。アビーさんの母親は、売却の意向を伝えた際に元義父から「売るなら家族全員を殺してやる」と脅迫を受けていたと証言しています。
今後の審理の行方
現在行われている裁判は、約45日間の審理が予定されています。法廷では事件当日の詳細な行動や、犯行に至るまでの経緯が次々と証拠として提示されており、今後も被告側の主張と検察側の立証が激しく交差することになります。アビーさんの消息を絶たせたメッセージアプリのやりとりや、犯行に使用されたとみられる凶器の入手ルートなど、事件の全容解明に向けた審理が続いています。