ストーカー規制法に基づく加害者へのGPS端末装着の是非をめぐり、警察庁の有識者検討会が議論を開始した。今年3月の池袋での女性刺殺事件などを踏まえ、重大犯罪の抑止に向けた実効性のある対策が求められている。朝日新聞などが報じた。
ストーカー規制法に基づくGPS装着の検討
警察庁の有識者検討会は、ストーカー加害者に衛星利用測位システム(GPS)端末を装着させる制度の是非について議論を進めている。ストーカー規制法は「桶川ストーカー殺人事件」を契機に議員立法で成立し、平成12年11月に施行された。予測される重大事件を未然に防ぐことを目的としてきたが、法改正を重ねても事件は後を絶たない。朝日新聞によると、加害者の禁止命令は2025年に過去最多の3037件に達している。
池袋の女性刺殺事件と従来の限界
今年3月、東京・池袋の商業施設でアルバイトの女性が元交際相手の男に刺され死亡した。男は昨年12月、女性へのつきまとい行為で警視庁にストーカー規制法違反容疑で逮捕され、禁止命令を受けていた。男は「もう近づかない」と述べていたが、犯行に及び自殺した。朝日新聞の報道では、男は略式起訴後に釈放され、警視庁は女性を避難させたものの事件を防げず、治療やカウンセリングも拒否していたとされる。

GPS端末装着が持つ抑止効果と制度の課題
加害者にGPS端末を装着し、接近時に被害者が気付ける仕組みとなれば、警察への通報や迅速な避難が可能になる。朝日新聞によると、韓国などでは位置追跡装置を内蔵した足輪型端末の導入が進んでおり、日本でも海外逃亡のおそれがある被告を保釈する際の制度が2028年をめどに始まる予定である。一方で、対象範囲や装着期間、裁判所令状の必要性など、慎重な制度設計が不可欠であるという指摘もなされている。
憲法が保障する移動の自由と公共の福祉
議論の焦点の一つには、移動の自由を保障する憲法との兼ね合いがある。憲法22条第1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定めている。規制法に基づく禁止命令を無視する行為は公共の福祉に反すると考えられ、被害者への接近時のみ反応する仕組みであれば常時監視には当たらず、命令を順守する加害者の生活に不自由はないとの意見もある。

桶川事件から27年、被害者遺族の訴え
東京新聞や専修大学でのシンポジウムの報道によると、1999年に発生した桶川ストーカー殺人事件の被害者である猪野詩織さんの父・憲一さんは、事件から27年を迎えるにあたり、ストーカー犯罪をなくすための講演活動を続けている。当時の捜査機関による告訴状の改ざんや、メディアによる二次被害の問題も指摘されており、二度と悲劇を繰り返さないための社会的な取り組みが求められている。
今後の議論と求められる迅速な対応
有識者検討会には、被害者の安全を最優先にした迅速な議論が求められている。韓国で端末装着中の男による事件が起きた事例なども報じられており、GPSの導入だけですべての解決にはならないという認識も共有されている。新たな犠牲者を出さないため、実効性のある制度の確立に向けた強い決意が示されるかどうかが注目されている。