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2024-05-01 07:00:00
撮影/中山実華
「企業の発展やイノベーション、事業が成長していくためには一人ひとりの多様な感性、多様な経験を取り入れていくことが非常に重要だ」
そんな考えのもと、経済産業省が打ち出したのが、シンプルで美しい、羅針盤を模倣した「ダイバーシティ・コンパス」。企業のダイバーシティ推進を指南するためのツールだ。
2024年3月8日に開催した「Wellbeing conference ──これからの社会と私たちのウェルビーイング」。トークセッション「グローバル経済をしなやかに航る。ダイバーシティコンパスの試み」では、経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長 相馬知子さん、KESIKI組織/ビジネスデザイン 国枝将大さん、パーソルホールディングス DI&E推進室 室長 本川碧さん、そしてMASHING UP編集長 遠藤祐子が登壇。
ダイバーシティ・コンパスの発案者、デザイン担当者、そしてそれを実践した企業が、持続可能な経済の根本となるダイバーシティ経営のゆくえをディスカッションした。
ダイバーシティ経営の先を見据えて

経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長 相馬知子さん。
撮影/中山実華
ダイバーシティ経営の浸透を図るために、経済産業省が作成した企業向けのツールは主に2つある。1つ目は、企業がダイバーシティ経営に取り組むきっかけとなることをめざした「ダイバーシティ経営診断ツール」。
経営者、人事、そして現場の3つの取り組み状況を可視化できる仕組みで多様な人材が活躍できる職場環境をめざし、今後の施策を考えられるよう設計されている。

資料提供/経済産業省
そして、経済産業省がダイバーシティを進めていくにあたって、「なぜ自分たちがダイバーシティ経営をするのか」という問いに立ち返ったことをきっかけにつくったのが「ダイバーシティ・コンパス」。
ダイバーシティ経営の先にめざす未来への道のりを確認できるように、という目的だ。

資料提供/経済産業省
「経済産業省が産業政策としてなぜダイバーシティを推進するのか。
『誰もが意志やビジョンを共有でき、能力が最大限に発揮される、柔軟で強い経済』というビジョンを真ん中に据えて、2層目にビジョンを達成するためのミッション、3層目に行動指針を置いています。
最初は経済産業省が主体となるものを作成したのですが、企業でも活用していただけるようブラッシュアップを進めており、そのためのワークショップなども実施しました」(相馬さん)
シンプルでありながら、ダイバーシティ経営に欠かせない要素を包括している。
さまざまな企業の施策と経済産業省が抱える課題をヒアリングするなかで、このようなデザインになったと国枝さんは語る。

KESIKI Org/Business Design 国枝将大さん。
撮影/中山実華
「女性活躍推進など、単に限られた領域のダイバーシティだけでは、世界で遅れをとってしまう。より包括的なダイバーシティを推進していくためには何にフォーカスすべきなのかを考えたときに、このコンパスというアナロジーにつながりました」(国枝さん)
コンパスの原則は、施策を打ったらそれで終わりではなく、連続的に取り組めること、そして取り組みに対する反応を見ながら次の道を再定義できることだと国枝さんは続ける。
「大切にしたのは、多面的で抽象的になりがちなDEI推進において、リーダーシップの話なのか、人事の話なのか、カルチャーの浸透の話をしているのかなど、次の課題にフォーカスしやすいこと。
また、各社でDEIの定義が異なりますので、それぞれが能動的に解釈し、腹落ちした上で行動できることをめざしました」(国枝さん)
他社と対話を重ね、気がついたDEIの課題

パーソルホールディングス DI&E推進室 室長 本川碧さん。
撮影/中山実華
実際に経済産業省とKESIKIのダイバーシティ・コンパス ワークショップに参加したパーソルホールディングス。DEI推進に力を入れてきた企業の1つだ。

資料提供/パーソルホールディングス
なぜDEIを推進するのか、課題は何なのかについて付箋を貼っていく作業のなかで、気づいたことが2つあるという。
「緑色の『オーガニゼーション』に多くの付箋が集まり、赤い『個人』の箇所は非常に少ない。その結果から、足りていないところ、目線が行きがちなテーマなどが分かりました。
もう1つは、グループ内の35社から2社参加し、それぞれ対話をしながら付箋を貼っていきました。そのなかで、実は知らなかったグループ会社のことを知るきっかけになったのです」(本川さん)
ワークショップは異業種混合で実施される。他企業と対話を重ねることで、新たな課題の発見と解決策などを導くこともできたという。
「各社のコンパスがどういう形になったのかを見て、対話をしました。そのなかで、自分たちが遅れていることや逆に、できていることも多く見えてきた。
他社からの考え方や学びを吸収できたと思います」(本川さん)
コンパスを携えて経済の波を乗り越える組織づくり

撮影/中山実華
本川さんの話を受け、相馬さんは、「自社の中だけで考えてダイバーシティを進めていると気づかないことが多い。他社と話してみることが有効だった」と頷く。
ダイバーシティ・コンパスは、企業間だけでなく組織内でも有効だ。「経営者」「人事管理制度」「現場管理職」の3者の視点や取り組み、課題を洗い出すことができる。
「組織内のワークショップを見ていると、経営者、人事管理制度、現場管理職、それぞれの間に課題があって、それらが対話を重ねることで接続されていくような印象を受けました。
たとえば、現場でビジョンについて改めて聞いてみると、経営層と認識が違っていたり。人事の方が最先端のDEI推進の取り組みを行っているが、現場では浸透していなかったり。組織内での学びは非常に大きいのではないでしょうか」(国枝さん)
パーソルホールディングスでも、経営者、人事管理制度をしっかりと現場に浸透させるために、グループ35社のマネジメントをミックスし研修を行なった。
「会社によって、女性活躍推進がまったく進んでいないところと、女性が多く活躍しているところがありました。
お互いに知り合うことで、学びや刺激になったと実感しています。グループを超えたマネジメント同士の交流にもつながりました」(本川さん)
遠藤は「ダイバーシティ・コンパスというツールを用いて生まれる、対話が重要なのだと気づいた。相手を知るためのコンパスなのではないでしょうか」とコメントを残した。
グローバル経済の波を乗り越えるために不可欠な、ダイバーシティという土台。一人ひとり、考え方が違い、DEIの捉え方も違う。まずそこの前提に立ち返り、ダイバーシティ・コンパスを用いて対話を重ね、つながりを見つけていく。そうすることで、土台はさらに強くなるに違いない。

撮影/中山実華
グローバル経済をしなやかに航る。ダイバーシティコンパスの試み
相馬知子(経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長)、 国枝将大(KESIKI Org/Business Design)、本川碧(パーソルホールディングス DI&E推進室 室長)、 遠藤祐子(MASHING UP編集長)
MASHING UPより転載(2024年4月2日公開の記事)
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