欧州連合(EU)は、紅海における商船護衛作戦「アスピデス」の艦艇数を現在の最大6隻程度から10隻超へ増強する検討に入りました。外交・安全保障政策上級代表のカヤ・カラス氏は2026年9月28日、加盟国に対し海軍支援の強化を要請。イエメンの反政府組織フーシ派による海域の掌握を受け、航行の安全確保が急務となっています。
バブ・エル・マンデブ海峡における封鎖宣言の影響
艦隊増強の直接的な引き金となったのは、フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡周辺の掌握と海上封鎖の宣言です。2026年7月20日、フーシ派は対立するサウジアラビアに関連する船舶への封鎖を宣言しました。公式には対象を限定する姿勢を見せていますが、実態はより広範囲に及ぶ可能性があります。サウジアラビアと関係のある企業や、過去に攻撃対象となったアメリカ、イギリス、イスラエルとの関連が疑われる船舶も高いリスクにさらされていると、各メディアは報じています。
欧州貿易の命綱を護るための戦力不足
バブ・エル・マンデブ海峡は、インド洋と地中海を結ぶ欧州にとって極めて重要な貿易ルートです。この重要な海域で、アスピデス作戦に参加する艦艇が一時2隻まで減少した際、イタリアのグイド・クロセット国防相が強い懸念を表明しました。カヤ・カラス氏は「より適切な装備を備えた海軍・航空戦力が必要だ」と強調しています。紅海は多数の船舶が常時航行する複雑な海域であり、現状の最大6隻程度の体制では、広域をカバーするには戦力が不足しているというのがEU側の判断です。
米英軍とEU艦隊の任務の決定的な違い
紅海およびアデン湾では、アメリカ海軍やイギリス海軍も活動を続けています。しかし、EUのアスピデス作戦は、両国の部隊とは明確に役割を区別しています。米英軍がフーシ派の拠点攻撃を選択肢に含めているのに対し、EU艦隊の任務は商船の護衛、航行の自由の確保、そして攻撃を受けた船舶や乗組員の救援に特化しています。EUの活動内容は、以下の通りです。
- 商船を狙うドローンやミサイルの迎撃
- 攻撃を受けた船舶および乗組員の緊急救援
- 紅海およびアデン湾における航行の自由の確保と監視
今後の見通しと残された課題
EU加盟国が、カラス氏の要請に応じて具体的にどの程度の艦艇を追加派遣するかは、現時点で不透明です。紅海周辺の安全保障環境は、フーシ派の攻勢により日々変化しており、10隻を超える体制が実現したとしても、複雑な海域での護衛任務がどれほど有効に機能するかは未知数です。商船の安全をどこまで担保できるのか、また各国の海軍支援が迅速に行われるのか、今後の動向が注目されます。