アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は、レバノンのジョセフ・アウン大統領と電話会談を行い、ヒズボラから押収した数百キログラムの爆発物を組織に返還しないよう強く求めた。この押収品を巡る国内の対立が深まる中、米国は責任者の追及とイスラエルとの直接的な軍事対話による緊張緩和を迫っている。.
ダール・エル・バイドールの検問所で押収された大量の爆発物
10月5日、ベッカ渓谷とレバノン山脈地域を結ぶダール・エル・バイドールの検問所において、レバノンの内務治安軍(ISF)が走行中の車両を停止させ、検査を実施したところ、車内からTNT火薬やC-4プラスチック爆薬など約800キログラムに及ぶ軍用爆発物や関連資材が発見された。治安当局者らによると、この車両には爆発物のほか、殺傷能力を最大限に高めるための金属製の球や釘が組み込まれていたとされる。同月には、レバノン軍がシリアからの国境地帯において約245キログラムのTNT火薬や即席爆発装置(IED)、起爆装置などの持ち込みを阻止する別の摘発も行っている。
この大量の爆発物輸送をめぐっては、ヒズボラの連絡調整局長であるフセイン・アル・アブダラが、治安当局によって押収された物資の返還を求めて水面下で動いていたと報じられている。アル・アブダラは、2024年のイスラエルとの戦闘による指導部の損失や、新たな事務局長であるナエム・カッセムの下での内部再編を経て、今年2月にワフィク・サファの後任として同職に就いていた人物である。過去の報道では、同氏は2001年にヒズボラのヒアム地区担当者、2002年には南レバノン東部地区の担当者、2010年には南部安全保障委員会の責任者などを歴任してきた経歴を持つ。
ヒズボラ議員のハッサン・ファドララは、The Jerusalem Postが伝えたAFPの報道によると、「車両とその積荷は抵抗勢力のものである」と述べた。
ルビオ国務長官による大統領への返還阻止要請と米国の要求
国務省高官によると、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は16日、レバノンのジョセフ・アウン大統領との電話会談で、押収された爆発物をヒズボラに決して返還しないよう直接求めた。イスラエル・ナショナル・ニュースがロイターの報道として伝えたところによると、ルビオは積荷の調達、資金提供、指示に関与したすべての者に法的責任を負わせるよう要求した。また、ルビオは平和への歩みを阻害する政治的な訴追に日常的に使われているレバノンの1955年のボイコット法に言及し、同法が実用的ではないと指摘した上で、誤算を減らし三者間枠組みの段階的履行を促進するために、レバノン軍とイスラエル軍の間で直接的な軍事間対話を行うよう強く促した。
これに対し、アウン大統領の事務所が発表した声明によると、大統領はルビオとの会談の中で、最近の動向を受けたレバノンおよび地域の安全保障情勢について協議した。アウンは、軍や治安機関が政府の決定に従って武器の誇示防止、武器弾薬の押収、密輸対策などの任務を遂行していると強調し、「司法当局は送致されたすべての事件を積極的に追及しており、犯人に対する寛大さは一切なく、いかなる贔屓目もなしに法律が適用されるだろう」と述べた。さらにアウンは、地域や国際情勢、およびイスラエルの選挙がアメリカの仲介によるレバノン・イスラエル間の直接協議のペースを鈍らせた可能性はあるものの、「それが停止したことを意味するわけではない」と語った。
深まる国内の政治的亀裂と過去の暗殺事件の記憶
レバノンのナワフ・サラーム首相は、今回の事件に関して「いかなる寛大な処置も行わない」「真実と説明責任を追求する」と述べ、国の安全と安定をもて遊ぶ者は誰も容認しない姿勢を示している。司法筋がAFP通信に語ったところによると、軍はTNT火薬250キログラムとC-4爆薬250キログラムを押収し、ベッカ渓谷のバアルベックでヒズボラの司令官サイイド・サジードから爆発物を受け取り首都南郊へ運ぶよう指示されていたとされる容疑者2名を逮捕した。MTVレバノンやアル・ハダスなどの報道では、容疑者らは1981年および1991年生まれとされている。


反対派の政治家たちは、ヒズボラが国内の敵対者を標的にする目的で爆発物を持ち込んだのではないかと警戒を強めている。元法相でザハレ地区選出の国会議員であるジョージ・オカイスは、3月頃からシュトラ自治体やジャララ町の防犯カメラが何者かに相次いで破壊されていたと苦情を申し立てていたことを明らかにした。また、カタエブ党のサミ・ジェマイエル党首は、2005年2月14日にラフィク・ハリリ元首相の車列がベッカあるいはベイルートで爆破され、元首相を含む21人が死亡、200人以上が負傷した事件を引き合いに出し、「ヒズボラメンバーが運んでいた爆発物が何のために意図されていたのかを問うことはしない。それは2004年から2008年の間に起きたような暗殺の波をあおるためのものであった可能性が最も高い」と警告した。さらに同氏は、レバノン国民が大きな危機に瀕していると訴え、徹底的な法的措置と組織の活動停止を求めた。
揺らぐ国家権力と未解決のまま残された火種
レバノン政府は、今年3月にヒズボラの軍事・安全保障活動を国家権力の外で行うことを禁止する決定を下したものの、ヒズボラ側はその決定を「無効であり、地上で何の効果も持たない」として完全に拒絶している。同組織の幹部らは、イスラエルの占領と攻撃に対抗するための手段や権利を守る構えを崩しておらず、アメリカの要求に基づくどのような圧力や標的化も容認しないと主張している。ダール・エル・バイドールでの事件は、軍事裁判所での審理が進められている一方、一部の閣僚は国家の重大な安全保障上の脅威を扱う司法評議会への移送を求めており、内閣内でも深刻な亀裂が露呈している。

司法当局による捜査が進められている一方で、押収された物資の正確な用途や、シリア国境の約330キロメートルにわたる多数の非公式検問所を通じてこれほどの規模の物資がどのように国内に入り込み、検問所に至るまでの移動経路で誰がどのように見過ごしたかについては、依然として明確な説明がなされていない。米国や国際社会の圧力が強まる中、レバノン政府が国内の安定と武装解除の双方をどのように両立させるのか、その先行きは不透明なままである。