ロサンゼルス国際空港(LAX)で中国への出国直前に逮捕されたカリフォルニア州の女性不動産業者が、米国内で台湾の最高指導者の家族に対する秘密裏の監視工作に関与したとして、連邦検察から起訴された。捜査当局によれば、被告は中国政府の指示を受けて複数の州にまたがる工作を実行し、その動静をリアルタイムで報告していたとされる。
ロサンゼルス国際空港での逮捕と出国未遂
カリフォルニア州アーバインに居住する不動産業の張宛瑩(ワンイン・チャン)容疑者(34、別名「ヘザー・チャン」)は、2026年10月4日の日曜日にロサンゼルス国際空港で連邦捜査局(FBI)の捜査員らによって身柄を拘束された。

カリフォルニア州中部地区のビル・エサイリ連邦検察官(当時)は、上海行きの航空機に搭乗しようとしていた同容疑者をその場で急襲し、外国代理人登録法(FARA)違反の容疑で逮捕したと発表した。連邦捜査当局は、同容疑者が中国政府の指揮下で未登録の工作活動に従事していたと主張している。連邦裁判所の審理において、司法省の担当検察官らは、同容疑者が海外逃亡の極めて高いリスクがあるとして身柄の拘束継続を強く求めた。連邦地裁のスティーヴ・キム判事は検察側の主張を認め、保釈を認めずに拘留を継続する決定を下した。弁護側は、夫や親族などの周囲の人物が資産を担保として提供する意思を示し、南カリフォルニアに家族の基盤がある点を強調して自宅軟禁を求めたものの、裁判所はこれを退ける判断を下した。
未公開の暗号資産口座と出国リスクの法廷闘争
法廷では、張容疑者が中国国内に多額の資金を保有している疑いや、未登録の暗号通信および秘密裏の金融手段を通じて資金を管理していた実態が検察側によって提示された。捜査当局は、同容疑者が過去に何度も海外へ渡航している事実を指摘し、逮捕の直前にも上海への片道切符を用意していたことから、そのまま米国へ戻らない強い動機があったと主張した。夫であるエドリック・ディン氏は連邦裁判所の廊下に姿を見せたものの、メディアからの質問には一切応じず沈黙を貫いた。
検察側の代理人を務めるアマンダ・エルボゲン弁護士は法廷で、「張容疑者が未登録の暗号資産取引所を介して中国の銀行口座に19万ドルを受け取っていたほか、中国国内に多額の資金を保有している」と指摘した。
3州にまたがる監視工作と協力者の存在
裁判資料によって、昨年6月から9月にかけて実行された工作の詳細なタイムラインが判明している。ラテン・タイムズの整理によると、張容疑者は2025年6月に中国へ渡航し、現地で中国政府の関係者と会談して米国内での監視任務を指示された。その後、同年8月29日にオレンジ郡のジョン・ウェイン空港からラスベガスへ移動し、9月1日に太平洋岸北西部の地域へ向かった。

刑事告発状などの記録によれば、張容疑者は別の人物と共謀の上、太平洋岸北西部のシアトル郊外にある住宅街で、台湾の総統の親族である男性の動向を追跡した。現地ではレンタカー会社で黒い日産ローグを借り受け、対象者の自宅周辺で待ち伏せを行っていたとされる。近隣住民の防犯カメラには、車内で携帯電話を掲げて写真や動画を撮影する不審な様子が記録されていた。また、入手した車のナンバープレートの情報を微信(WeChat)などの通信アプリを介して中国側の担当者にリアルタイムで送信していたことが、FBIの提出した宣誓供述書によって明らかにされている。
相次ぐ中国関連の摘発事例とその背景
今回の事件は、米国における中国政府の影響力工作や越境鎮圧を取り締まる一連の捜査の一環として浮上した。

連邦捜査当局は、中華人民共和国の当局が米国内の対立勢力や政権指導者の親族に対する情報収集活動を活発化させているとの見方を示している。司法省やFBIの高官らは、「こうした工作活動が米国の国家安全保障に対する重大な脅威である」と強調しており、今件に関する捜査を引き続き慎重に進める方針を示している。張容疑者に対する裁判の今後の日程や起訴の正式な手続きについては、引き続き連邦地裁で審理が続けられる予定である。