国連開発計画は12日、世界の貧困状況を示す「多次元貧困指数」の対象人口が、2010年の導入以来初めて増加し12億人に達したと発表した。深刻な貧困状態にある人は前年から5150万人増え、その半数以上を子どもが占めているという。
12億人に達した多次元貧困人口と増加の背景
国連開発計画(UNDP)と英オックスフォード大学の研究機関「オックスフォード貧困・人間開発イニシアチブ」が12日にまとめた2026年版の年次報告書によると、世界の多次元貧困人口は12億人に到達した。深刻な貧困状態にある人は前年から5150万人増加している。UNDPのアレクサンダー・デクロー総裁はこの結果について、「世界にとって警鐘となるべきだ」と指摘した。報告書は、飢餓や教育機会の喪失、清潔な水や電気の不足といった複数の困難が互いに悪影響を及ぼしている現状を明らかにしている。さらに、貧困人口増加の主な要因の一つとして人口増加を挙げた。今回の報告書の対象となった開発途上国108か国のうち、新たなデータが得られたのは13か国にとどまっている。
深刻な貧困の半数以上を占める子どもたち
UNDPの発表では、深刻な貧困状態にある人の半数以上が子どもであることが示されている。適切な住居、衛生設備、電気、調理用燃料、食料、教育などが不足している状況を多次元貧困指数は指標として捉えており、未来を担う世代が過酷な環境に置かれている実態が浮き彫りとなった。デクロー総裁は、こうした数字の背後にある12億人の人々が直面する困難は「容認できない」と強く訴えている。子どもたちの教育や健康にかかわる基盤の欠如は、長期的な社会全体の発展にとっても深刻な課題として立ちはだかっている。
改善が進む地域と中国・ベトナムなどの動向
貧困人口の総数は増加したものの、報告書は同時に改善の動きも示している。過去15年間で、33か国が多次元貧困指数の値を半減させた。このうち6か国はサハラ以南のアフリカ諸国であり、特に急速な改善を遂げた国には中国やベトナムなどのアジア諸国が含まれていた。UNDPの声明によると、エジプト、ネパール、タジキスタンでは貧困率と多次元貧困状態にある人の数がいずれも大幅に減少している。アンゴラとザンビアでも貧困率は低下したものの、人口増加がその減少分を上回ったため、貧困状態にある人の数は結果として増加した。
サハラ以南のアフリカと南アジアに集中する最貧層
前年と同様に、最も貧しい人々の大多数はサハラ以南のアフリカと南アジア、特に人口密度が非常に高いインド亜大陸に集中している。地域ごとの格差や人口動態が貧困削減の成果に与える影響は大きく、単純な割合の低下がそのまま人口の減少に結びつかないケースも確認されている。報告書は、各地域が抱える構造的な課題とともに、インフラ整備や社会サービスの拡充がいかに急務であるかを改めて示している。多様な指標をもとにした実態把握が進む中、地域別のきめ細かな支援戦略の構築が求められている。